Vol.0510
<タックスニュース>
ポイント還元目当てに減資 小売企業の「中小化」が加速
10月に控える消費増税を前に、小売業を営む大企業の減資が相次いでいる。増税対策として実施されるポイント還元の対象になるため、中小企業になるのが狙いだ。増税対策の恩恵を受けるための大企業の減資がまかり通れば、中小企業対策としての公金投入の正当性は失われることになる。経産省は「申請時点にさかのぼって対象外とすることもある」と企業をけん制するが、資本金の増減という企業の経営判断に対してどこまで踏み込めるかは未知数だ。
政府が打ち出す増税対策のポイント還元策は、消費者が申請に基づく中小事業者でキャッシュレス決済をした時にのみ、2%~5%を追加で還元するというものだ。その際の中小事業者の定義は中小企業基本法とほぼ同じで、小売業者については「資本金5000万円以下または常時雇用の従業員50人以下」とされている。
帝国データバンクのまとめによれば、減資を行った小売業者は2018年1月~7月には252件だったのに対し、19年の同時期には412件と6割も増加した。減資を行う全企業のうち小売業が占める割合は、平年は8%程度となっているところが今年に限ってみれば約14%と突出している。
実際に神奈川、埼玉、高知、沖縄など全国で、これまで1億円ほどだった資本金を、今年に入って5000万円や3000万円まで減資するスーパーや百貨店などが出ているという。理由については「今後の資本政策を踏まえた総合的な判断」と言葉を濁すが、大きな理由としてポイント還元策の恩恵にあずかることがあるのは事実だろう。
こうした大企業の動きについて、6月に世耕弘成経済産業相(当時)は「減資には手数料とか司法書士に依頼するコストなどもかかるわけだから、ポイント還元のためだけに減資するような動きが起こるとは思っていない」とコメントしつつも、「仮に還元期間に限って意図的に減資を行い、期間終了後に再度増資をするようなケースが見られた場合には、申請時点にさかのぼって対象外とさせていただく」と大企業の期間限定の減資を放置しない考えを示した。とはいえ、ポイント還元以外にも中小企業を対象とした施策が多く存在することから、今回減資した企業はそれらの恩恵を受けるために当面は資本金を維持するほうが得策と考えるのが自然だ。経産省の”けん制”が効果を発揮するかは疑わしいと言わざるを得ない。
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<タックスワンポイント>
人間ドックで病気見つかれば医療費控除 所得から費用を差し引ける条件
年間にかかった医療費のうち10万円を超えた部分を所得から差し引ける「医療費控除」は、適用するためにはいくつかの条件がある。例えば一概に医療費といっても、その費用はあくまで病気やけがの治療に必要な支出でなければならず、インフルエンザのワクチン接種など予防にかかった費用は対象とならない。同じことは人間ドックや健康診断にも言え、疾病の治療に伴う出費ではないため、原則として医療費控除の対象にはならない。
しかし人間ドックなどの費用に医療費控除を使えるケースもあり、それは検査を受けた結果、治療を必要とする疾病が発見された時だ。病気が見つかった時は、その検査は治療に先立って行われる診療と同様のものとみなされ、全額を医療費控除の対象にできる。人間ドックは全身を徹底的に調べるコースだと100万円を超えることもあり、それが所得から差し引けるとなれば嬉しい話だが、引き換えに重大な病気が見つかってしまったのだから素直に喜べようはずもない。ここはせめて、病気が見つからなければ健康を喜び、病気が見つかってしまったら医療費控除が使えることを心の慰めとするのが前向きな考え方かもしれない。
なお会社が人間ドックの費用を負担した時には、一部の役員や従業員を対象とする検診かどうかで、税務上の扱いが変わる。全従業員(一定の年齢以上のすべての者の場合も可)を対象とするものであれば福利厚生の一環として損金に算入できるが、一部の役員のみを対象とするような検診であれば役員報酬扱いとなり、役員本人には所得税が課され、会社の損金にもできないので気を付けたい。
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