Vol.0824
<タックスニュース>
非上場株式評価の見直し 国税庁「残余利益方式」を提案
国税庁はこのほど、「取引相場のない株式の評価に関する有識者会議」の5回目の会合を開き、一般の評価会社に対する株式の評価方法を企業の簿価純資産と当期純利益から算出する「残余利益方式」に見直すとする事務局案を示した。これまでの「類似業種比準方式」は使わず、「純資産価額方式」は特定の評価会社に限って適用する。「残余利益方式」を適用することにより、低収益の中小・零細企業は従来の評価方法よりも税負担が減るとしている。
国税庁が「残余利益方式」を事務局案として示した。企業の直前期末の純資産に今後5年間で見込まれる収益力を考慮し、一定の条件で出した係数を掛けて算出する。従来の評価方法より簡便になるという。収益力は、還元率を用いて算定するとしている。利益と配当がない会社の株式評価額は還元率が高くなるにつれて低下することになり、高収益企業には相応の税負担が発生する一方、赤字または低収益の企業は税負担が減る見通しだとしている。還元率は国税当局が定期的に更新して公表することを想定している。
国税当局によると、見直しの方向性について、多くの委員の賛同を得られた一方、明確に反対する委員が1人いたという。委員からは「企業のROE(自己資本利益率)が高い状態が何年続くかを分析すると、長くても10年は続かないので、(収益力の見込みは)5年ぐらいでいいのではないか」「実務上、納税者が計算できる妥当な方法」との意見があった一方、「中小企業に対して上場企業と同等の還元率を用いることや、一律の還元率を用いることについて、理論的、実証的な裏付けが本当にあるのか」といった反対意見もあったという。
この日は日本商工会議所の阿部貴明特別顧問・税制委員長と玉越賢治税制専門委員会学識委員の2委員が連名で意見書を提出した。意見書は、新方式を検討するに際しての確認事項として「問題となっている制度部分や租税回避行為への限定的な見直しが優先されているが、評価体系全体の変更とは分けて検討すべき」と主張。残余利益方式の問題点としては、「地域を支える中核的な中小企業の評価額が大幅に上昇する可能性がある」と指摘したうえで、「中小企業の事業承継のハードルを永続的に上げていくことを意味する。現在、株式評価が課題とならない小規模な企業においても、新方式の下では、今後、相続税負担の問題に直面することになりかねない。一部の課税逃れ対策のために、多くの中小企業の事業承継が崩壊するのではないかと強く懸念する」と強調した。
国税庁は今秋をめどに27年度税制改正に向けた案をまとめる方針。27年度税制改正大綱で見直しの方針が示されれば、評価通達の改正を経て28年1月から新ルールが適用される可能性がある。
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<タックスワンポイント>
赤字でも税務調査はやってくる 棚卸資産、領収書…念入りに調査
税務調査のターゲットといえば、儲かっている黒字の会社が狙われやすいというイメージがある。もちろんそれも事実なのだが、だからといって赤字法人に税務調査が入らないということはない。税務署は、業界などの動向を調べたうえで、準備調査の段階から決算書や資料を詳細に把握し、経理処理のミスを指摘したり、場合によっては隠れた黒字を発見したりする。
例えば、消耗品に棚卸資産とするべき貯蔵品がないか、雑費でも役員の個人負担とするべきものが含まれていないかなどに税務調査官は目を光らせている。旅費については、旅費規程を詳細に確認し、規定通りに支出と記帳が行われているかどうかを調べる。また領収書では、手書きのものや宛名が「上様」となっているもの、高額な金額が記載されているものについて特に念入りに裏取りする。給与についても、給与額を社員から直接聴取し、記帳してある金額との突き合わせを行う。
税務調査では、経理処理や記帳内容をつぶさに確認する作業が進められ、処理のミスや取り扱いの勘違いなどがあぶり出されていく。赤字法人であっても調査対策はぬかりなく行っておきたい。
