Vol.0774
<タックスニュース>
日本損害保険協会 消費税制上の課題指摘 「税の累積」「税の中立性の阻害」解消を要望
日本損害保険協会(舩曵真一郎会長=三井住友海上火災保険社長)はこのほど開いた理事会で2026年度の「税制改正関する要望」を決定し7月24日に発表した。「火災保険等に係る異常危険準備金制度の充実」など7項目について要望している。
要望は、①火災保険等に係る異常危険準備金制度について、洗替保証率を現行の30%から40%に引き上げること(本則積立率となる残高率も同様に引き上げ)②国際課税ルールに基づく国内法制度の見直しや実施にあたっては損害保険ビジネスの特性を踏まえ、正当な経済活動を阻害することがないよう十分に留意すること③税率の引上げに伴って拡大する、損害保険に係る消費税制上の課題(「税の累積」「税の中立性の阻害」)を解消する抜本的な対策を検討すること④確定拠出年金制度について、個人型年金および企業型年金の積立金を対象とした特別法人税を撤廃すること⑤地震保険のさらなる普及のため保険料控除制度の充実策について検討すること⑥受取配当等益金不算入制度について、「二重課税の排除」の観点から議論を行うこと⑦既に収入金額を課税標準(100%外形標準課税)としている損害保険業に係る法人事業税について、現行課税方式を継続すること――の7項目。
このうち損保協会が消費税制上の課題とする「税の累積」「税の中立性の阻害」とは、損害保険料が消費税の非課税対象となっていることで生じる問題のこと。
「税の累積」は、一般事業者にとって原価の一部である損害保険料(自動車保険や火災保険、物流リスクや賠償責任に備える保険など)のなかに「見えない消費税」が含まれるため、本来は担税者ではないのに仕入税額控除ができず、実質的には一般事業者が負担するかたちとなっている問題。これにより、流通過程を経るたびに「転嫁」と「仕入税額控除」の連鎖の寸断による「税の累積」という課題が発生している。
「税の中立性の阻害」は、損害保険会社が別会社に事務処理などをアウトソーシングした場合、業務の委託費などには消費税が課されるが、仕入税額控除はほとんど行えないために生じる問題。損害保険会社では、消費税の負担を軽減する観点から、業務の内製化を志向するようになるため、税制のあり方によって企業活動が左右される「税の中立性」の課題(セルフ・サプライ・バイアス)が発生する。損保協会では、この課題を解決する制度上の手法として、「付加価値税(消費税)制度を導入する多くの国では、グループ内取引について付加価値税制度上取引自体がないものとして取り扱い、グループ全体としての課税売上割合などにより一括して納税するグループ納税制度を導入」していると指摘。そのうえで「我が国においても同様な制度の導入が必要であると考えます」と提言している。
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<タックスワンポイント>
納税資金が足りないときの中間申告 実情に沿った仮決算OK!
昨年は事業が好調だったが今年に入って業績が急落し、上半期の時点で多額の赤字が出るほどだったとする。こうした場合に気を付けたいのが、法人税の中間申告だ。事業年度の開始から約半年後に、前年の納税額に基づき中間申告をするのだが、その際に前年度の法人税額の2分の1に当たる法人税を納めることを求められてしまうためだ。昨年に儲けた分を内部留保として手元に置いていればいいが、赤字の状況で支出がかさんで納税資金が足りないというケースもあるだろう。
このように中間申告の納税資金が手元にない場合は、書類の通りに前年度の法人税額の半額を申告額とせず、今期の決算をその時点で仮に行い、それに基づいた税額を納めることも可能だ。その結果、仮決算が赤字なら納税額はゼロとなるので覚えておきたい。
ただ仮決算による中間申告をすれば資金繰りは円滑になるが、手間は増えることになる。仮と言っても確定申告と同じように決算をして、確定申告書を作成しなければならないからだ。手間や余裕資金を踏まえて自社に有利な方法を選ぶようにしたい。