Vol.0806
<タックスニュース>
通勤手当上積みで 労使とも負担増
JR東日本は今春、約40年ぶりに運賃の本格的な値上げに踏み切った。全体の改定率は7.1%で、通勤定期運賃に限れば平均12.0%もの値上げとなる。日々の営業活動で支払う交通費が増え、また通勤手当を支給している中小事業者にとっては定期券代の引き上げ分が単純に負担増となるわけで、今後のキャッシュフローを圧迫することになる。さらに、従業員の手取りが減るという事態につながりかねず、しかも事業主は定期券代が上がった分を超える負担を強いられるおそれがある。社会保険制度に仕組まれたいびつな構造によるもので、小粒の減税策の箕に隠れた〝ステルス増税〟といえそうだ。
通勤手当は鉄道会社に支払う実費の肩代わりに過ぎず、従業員の懐に入る〝所得〟とはいえない。そのため税制では、1カ月15万円までの支給であれば従業員に所得税が課税されないルールになっている。だが社会保険では取り扱いが異なる。通勤手当も基本給や残業代と同様に、保険料算定の基礎となる「報酬」に含めなくてはならない。そして社会保険制度上の報酬が増えると、保険料を決定する「標準報酬月額」の等級が上がってしまう可能性がある。
厚生年金保険の標準報酬月額は報酬月額に応じて32等級にわかれ、報酬がその境界線上にある場合には1円の違いでも等級がかわる。今回の運賃値上げで例えば31等級から最も上の32等級へとスライドすれば、従業員は月額2745円の負担増となってしまう。事業者ごとに加入している健康保険も同様の仕組みのため、負担が大きく増えるおそれがある。通勤手当の引き上げ分は通勤定期運賃の値上げ分と相殺で従業員にとって〝プラマイゼロ〟のはずが、手元に残る現金が減るというわけだ。将来的に受け取る厚生年金が増えるといっても支払い分を取り戻せるとは限らず、納得できる従業員は少ないだろう。
そのうえ、事業主が強いられる負担も増えてしまう。よく知られているとおり、社会保険料は事業主も従業員と同額を支払わなければならない労使折半の仕組みとなっているためだ。通勤定期運賃の値上がり分に社会保険料の納付の増加分が加われば、従業員規模によっては年間で数十万円~数百万円単位のコスト増となりかねない。
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<タックスワンポイント>
貼付と消印の手間を省く 印紙税の「税印」
大量の契約書や領収書を発行する際、1枚ずつ収入印紙を貼り、ハンコで消印を押す作業は、経理担当者にとって大変な負担だ。単純に事務量が多いだけでなく、金券と同じである物理的な印紙の紛失リスク、押し忘れによる過怠税の恐怖もある。
そこで、こうした事務負担やリスクを一掃する「税印」という制度がある。正式名称は「税印押なつによる納付の特例」。切手のような収入印紙を買って貼る代わりに、課税文書に課される印紙税相当額をあらかじめ現金納付したうえで、税務署に直接持ち込んで税印の押印を請求する仕組みだ。これにより、印紙を貼って消印をしたのと同じ法的な効力を持つわけだ。
税印の最大のメリットは、印紙の購入・管理・貼付・消印という一連のアナログな作業とミスを完全になくせる点にある。一方で、大量の書類を税務署まで物理的に運び込む労力はかかる。
ただし、税印には納付した印紙税額は表示されない。そのため、現実に文書が作成される段階にならなければ印紙税額が確定しないような文書は、税務署から税印押印の請求を棄却される。例えば、不動産譲渡に関する契約書など、印紙税額が文書の記載金額によって異なり、その記載金額が明らかでない場合、税印は使えない。
