Vol.0751
<タックスニュース>
不動産オーナーの資産運用術 償却済み資産で資金調達
不動産オーナーの資産運用の新たな選択肢として“エレベーターリース”が注目されている。1棟マンションなどの保有物件に設置されている減価償却済みのエレベーターを専門事業者へ売却し、その後はリースによって従来通りに利用していくスキームで、最終的には買い戻すことも、リース契約を再度更新することもできる。減価償却済みの資産を現金化して修繕費用に充当するなど、新たな資金調達手法として活用することも可能だ。
エレベーターの法定耐用年数は17年。それを経過すれば減価償却が終了する。エレベーターリースは、そうした減価償却済みのエレベーターを専門事業者が購入し、そのうえでリース契約を物件オーナーと結ぶ。リース契約期間中の保守・メンテナンス費用はオーナーが負担する。将来的に「購入選択権」を行使できるように設定しておけば、オーナーが買い戻すこともできる。
専門事業者であるエレベーターアセットのシミュレーション(東京・新宿区)によると、東京23区内で築25年・4階建て450㎏のエレベーターの場合、同社が物件オーナーに一括で支払う買取価格は237万6千円(税抜、以下同)。オーナーは売却後、同社と10年間のリース契約を結ぶ。月々のリース料は1万4千円で、10年間の支払総額は168万円となる。リース期間終了時の購入選択権行使額は17万3280円。売却時に受け取った金額からこれらを差し引いても、オーナーの手もとには52万2720円が残る計算だ。つまり、同社から支払われた買取価格の11%~20%程度の収益が期待できる。ただし、当然ながら一時的に得た売却益には税金が発生してしまうので、それを避けたいのならば赤字の決算期にあわせての利用や、同じ事業年度内にまとまった支出が計画されているケースでの活用を検討したい。
当然、売却時点での現金化のメリットも大きく、調達した資金を修繕費用に充てるなど、使途はオーナーが自由に判断できる。
エレベーターアセットではリース事業に加え「エレベーター広告」のスペース提供も行う。オーナーから買い取ったエレベーターの内壁などにポスターを貼り付け、広告収入を得るという仕組みだ。マンションの住人など多くの人の目に触れるスペースであることから、広告効果は高いという。これにより、不要なポスティングチラシを減らす効果も期待できる。エントランス・集合ポスト周辺の美化が保たれることで、物件価値がアップして空室が減り、家賃収入のアップにもつながることだろう。広告クライアントとしては、ポスティング行為に対するマンション住民からの苦情や、不法侵入を疑われての通報・クレームなどから解放される。加えて、紙資源の無駄を省くことでゴミの削減と、環境に配慮した企業としてのイメージ向上にもつながる。
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<タックスワンポイント>
何がそんなにオイシイのか、小規模共済 払込や受取に複数の税優遇
報酬はなるべく多くほしいが、報酬額を上げれば当然その分だけ所得税も上がってしまう。かといって報酬を絞れば、会社の利益がそれだけ増えて法人税が上がってしまう。そんなジレンマで、自分の報酬をどれほどに設定するか悩んでいる社長さんも多いだろう。そこで会社の税金を減らしつつ、社長個人の税金を増やさずに老後のための資産形成もできる「小規模企業共済」の活用を考えたい。
小規模企業共済は、常時使用する従業員が20人以下(サービス業、小売業は5人以下)の会社役員か個人事業主が入れる共済制度で、社長本人以外にも、共同経営している家族従業員が入ることも可能だ。加入メリットとして、掛け金は全額が所得から控除され、さらに共済金の受取時には一括であれば「退職所得」として一定額までは課税されず、また課税されたとしても給与所得に比べて格段に低い税率が適用されることがある。さらに年金として受け取れば「公的年金等の雑所得」となり、これも1年当たりの受取金額を抑えることで非課税にすることができ、本人が亡くなって遺族が受け取れば「相続人の数×500万円」の非課税枠が使えるという、多重の税優遇が魅力だ。
掛け金の上限は月額7万円で、その範囲内で小刻みに設定することができる。仮に月額7万円の掛け金を社長が支払い、その分を役員報酬に上乗せすると、社長個人としては増額された月7万円分がそのまま全額控除されて税金は増えず、老後の資産形成ができる。さらに会社としては、月7万円が給与支払いとして損金になり、年84万円の利益が減ることになる。個人と法人で、ダブルの節税につながるわけだ。
メリットの大きい小規模企業共済だが、もちろん注意すべきポイントもある。一つは、節税効果だけを重視して掛け金を多めに設定すると、あとで支払いが厳しくなる可能性がある。掛け金は加入後でも減額させることができるが、減額した部分がそれ以降まったく運用されずに放置されてしまうという特徴がある。つまり掛け金を7万円に設定して5年間支払い、その後4万円まで下げると、差額の3万円分については、それまで5年間支払ってきたにもかかわらず、その後共済金が支払われる時まで出金も運用もできない“死に金”となってしまうわけだ。
また加入期間が短いと元本割れしてしまうケースがあるなど、気を付けるべき点もある。それでも小規模企業共済は、加入要件さえ満たせるなら入っておいたほうがいいおトクな制度と言えるだろう。
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