<タックスニュース>

Jリーグクラブの損失補てんは「広告宣伝費」  長年の税のナゾが氷解

サッカー関係者が、Jリーグ開幕の1993年以来ひそかに抱き続けてきた疑問に、ついに明確な答えが出された。国税庁は5月15日、ホームページ上でJリーグからの文書照会に回答し、「親会社が補てんしたクラブの欠損金は、親会社の損金に当たる」との見解を示した。
税法には、スポーツチームにのみ認められた税優遇がある。国税庁が1954年に発遣した通達、「直法1-147 職業野球団に対して支出した広告宣伝費の取扱について」では、子会社である球団に生じた欠損金を親会社が補てんするために支出した金は、損失額を限度として、「広告宣伝費の性質を有するもの」として取り扱うとある。例えばプロ野球団が大枚をはたいて積極補強をしたものの成績が振るわず、観客動員数が落ちて赤字決算になってしまったとする。そうした時に親会社である企業がその赤字を埋めると、その分は親会社の「広告宣伝費」として、損金に算入できる。この規定がなければ、親会社による赤字補てんは会社から会社への利益移転や寄付扱いとなり、様々な税負担が生じることとなる。同通達があることで球団への損失補填は、親会社の広告のための正当な出費とみなされるわけだ。
Jリーグも1993年の開幕以来、この規定を適用し、親会社によるクラブへの補てんや支出を行ってきた。例えば2018年に世界的なスターであるアンドレス・イニエスタ選手がヴィッセル神戸に入団したことはサッカー界を超えて話題となったが、同選手への年俸推定32.5億円は、親会社である楽天の三木谷浩史氏が出したと言われる。同チームは前年にも元ドイツ代表のビッグネームであるルーカス・ポドルスキ選手を年俸約10億円で獲得したが、同クラブの決算を見ると、17年度は1億5500万円の赤字となっていて、とてもイニエスタ選手の年俸を捻出できる状況ではなかった。この際には、前述の通達を適用し、三木谷氏の出資を楽天の「広告宣伝費」として処理したとみられる。
しかし、通達では対象となるスポーツが「職業野球団」とはっきり書いてあり、Jリーグは含まれていないとも取れる。この疑問に対する答えは、これまで明確化されてこなかった。Jリーグの創設に貢献した川淵三郎さんの著書によれば、プロ野球と同じ税優遇を受けられるよう国税庁にかけあった結果、「ユニフォームの胸に親会社の企業名が入れば広告宣伝費として計上できる」とのお墨付きをもらったと書かれているが、真偽は判然としない。現実としてJリーグもプロ野球同様に親会社による損失補てんが適用されているのは確かなのだが、その根拠がはっきり明文化されたことはない。一説によれば、通達とは異なる理屈が適用されるとも言われてきた。
しかし新型コロナウイルスによってJリーグが長期休止を余儀なくされ、観客収入のない各クラブの財務状況が厳しくなっていることを受け、ついにJリーグが文書照会による明確化を求めることとなった。新たに国税庁から示された回答によれば、親会社が子会社であるクラブに対して支出した額のうち、広告宣伝費の性質を有すると認められる部分は、損金の額に算入される、親会社がクラブの欠損金を補てんするために支出した額は、欠損金額を限度として、特に弊害がない限り、広告宣伝費の性質を有する、新型コロナウイルス感染に伴い、親会社がクラブに対して行う低利または無利息の融資は、正常な取引条件に従って行われたものとする――という3点が明確化された。プロ野球と同じ扱いであることが、国税庁によって明文化されたというわけだ。

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<タックスワンポイント>

源泉所得税は10人未満なら納期に特例  イレギュラーな支払いは対象外となることも

毎月納付するのが原則の源泉所得税だが、小規模事業者には半年に一度のスパンで納めてもよいという特例制度がある。毎月10日にやってくる納期が、7月10日と翌年1月10日の2回だけになるのだからありがたい。給与の支払いを受ける人が常時10人未満であることが条件で、法人か個人事業主かを問わず申請によって適用を受けることが可能だ。
ただ、源泉所得税の全てが納期の特例の対象となるわけではなく、給料やボーナス、退職金、税理士などへの報酬に限られる。これらは業種や業界に関係なく、どんな会社でも支払いそうな所得であると言える。そのため、源泉徴収制度をよく理解しないで特例制度を利用していると、ある日突然発生したデザイナーへの報酬やセミナーの講演料の源泉徴収を忘れてしまい、当局に指摘されて慌ててしまうということにもなるので注意したい。
特例において主に気を付けるのは、納付書の扱いだ。源泉所得税の納付書は1枚で全てを網羅しているわけではなく、所得の内容によって用いる納付書が異なる。納付書には、その対象となる所得ごとに、給、報、利、配、非、償、定、株と、忍術の「印」のように略号が付されている。それぞれ「給」は給与所得、退職所得等、税理士などの報酬・料金、「報」は「給」の対象となる税理士など以外への報酬・料金、生命・損害保険契約等による年金など、「利」は利子所得、投資信託などの収益の分配など、「配」は配当所得、「非」は非居住者および外国法人に支払う各種所得、「償」は割引債の償還差益、「定」は定期積金の給付補てん金等や懸賞金付き預貯金等の懸賞金など、「株」は源泉徴収を選択した特定口座内保管上場株式等の譲渡による所得等だ。
もしも普段みられないイレギュラーな報酬や料金の支払いが発生したときは、いつも使っている特例納付の納付書の項目を確認し、そこに記載のない種類の所得であれば納期特例の対象外となり、翌月10日までに納付しなくてはならないものに該当するということだ。
普段から気を付けていれば防げるミスも多い。つまらない指摘を受けないようにしたい。

税理士法人早川・平会計