Vol.0765
<タックスニュース>
JFしまね訴訟 岸会長の上告棄却 3千万円の支払い命じた判決確定
漁業協同組合JFしまねの岸宏会長による不適切な会計処理などによって、法人税の納付が遅れ延滞金が発生するなどの損害を被ったとして、組合員の漁業者32人らが会長に対し1億円あまりの損害賠償を求めていた裁判で、最高裁は5月14日までに会長側の上告を棄却した。広島高裁松江支部が約3千万円の支払いを命じた2審判決が確定した。
この裁判は、会長の職務怠慢や、業務上必要のない「視察」での不適切な旅費・飲食費などの支出により、漁協に損害が生じたとして組合員らが約1億円の損害賠償を求めて提訴したもの。
1審の松江地裁は2024年6月、「県外への視察で旅費規定を超えた宿泊費や法人税などの納付が遅れたことによる延滞金の発生などは会長の不適切な事業運営によるもの」とし、会長に4150万円の支払いを命じる判決を言い渡した。
2審の広島高裁松江支部は同年12月、会長が大型スーパーを視察した際の「旅費、飲食費の支出に違法性はない」として、1審よりも減額した約3千万円の支払いを命じていた。
岸宏会長は1944年生まれ。島根県出身。関西大学経済学部卒。89年島根県漁連常務理事、93年御津漁協代表理事組合長などを経て、06年漁業協同組合JFしまね代表理事会長に就任。10年には全国漁業協同組合連合会(JF全漁連)理事、13年にはJF全漁連代表理事会長に就任し22年に退任するまで長くトップに君臨するなど、全国組織の上部団体でも要職を歴任した漁業界の重鎮として知られる。
退任後3年しか経過していないJF全漁連の会長時代にも不適切な会計処理がなかったかについては明らかになっていない。JF全漁連の本部は東京都中央区新川に置かれており、所轄の京橋税務署(中央区新富)、東京国税局(中央区築地)とは目と鼻の先だ。
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<タックスワンポイント>
大家の許諾は必要なし借家権の相続 民法に優先する特別法の強い効力
借地や借家の賃借関係においては、かつては大家が圧倒的に優位だった。しかし1992年に施行された借地借家法では、借り手に強い権利を認め、大家の一方的な退去勧告に従わざるを得ないというような事態は起こらなくなっている。大家の側からすれば、転居してもらうには一般的に借り手との交渉が不可欠で、それなりの補償金が必要になることも多い。
現在の借地権は強い権限を有し、契約期日の到来に際しては契約の更新を地主に請求することができ、また契約を更新しない場合には建物の買い取りを地主に請求することもできる。この借家人の持つ権利は、相続後も引き継がれる。相続にあたって「契約したのは被相続人だから死去により契約は解除する」などと一方的に借主に通知してくるケースも現実にはあるが、こうした要求に法的に応じる必要はない。土地の賃借に関しても同様で、借り手は「相続で賃借権を取得しました」と通知するだけで手続きは終了し、権利の継承に関して大家の許可は一切必要ない。
なお相続税申告に当たっての借地権の評価は、その土地の更地での金額に借地権割合を掛けて計算する。借地権割合は、国税庁ホームページで公開されていて、土地に路線価が定められていれば「財産評価基準書」の路線価図に、定められていなければ評価倍率表に記載されている数字を利用する。
これらの借地権とは異なり、契約期間の満了をもって更新せずに借地権が消滅する「定期借地権等」もある。こちらの相続財産としての評価に当たっては、地権者の経済的利益、宅地の取引価額、相続発生時の定期借地権の残存年数に応じた複利年金現価率などを使って計算する必要があり、かなりややこしい。特徴としては、期間の定めのない借地権に比べてかなり低い評価額となる点が挙げられるだろう。
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