<タックスニュース>

決まらない防衛財源  特命委員会が先送り提言

自民党の特命委員会(委員長・萩生田光一政調会長)は、防衛費増額の財源確保策に関して、増税時期の2025年以降への先送りを念頭に置いた提言を岸田文雄首相に提出した。経済財政運営の指針「骨太の方針」に向け、今後は提言の内容がどこまで反映されるかが焦点となりそうだ。
政府は22年末、防衛力の抜本的強化に向け、防衛費の総額を23~27年度の5年間で43兆円程度とする方針を決定した。27年度以降は従来4兆円弱の追加財源が必要とし、歳出改革や税外収入などで3兆円弱を賄う一方、法人税、所得税、たばこ税の3税を対象に増税し、1兆円強を確保する方針を示している。
増税時期について、政府は「24 年以降の適切な時期」に実施するとしているが、提言は「25年以降のしかるべき時期とする柔軟な判断も可能にするには、税制措置以外の財源を更に確保することが必要」と明記し、先送りに言及した。「税制措置により国民に負担をお願いすることは最終的な手段」と強調し、増税以外で賄う財源を「確実に確保することを含め最大限の努力をすべきである」と要望。岸田首相は提言について、「(骨太の方針に)できるだけ取り入れるように努力する」と述べている。
先送りの背景には、年末に向けて防衛だけでなく、少子化対策の財源を巡る課題も山積する中、党内ではかじ取りを誤れば禍根を残すとの危機感が強まっている。
また、提言では増税以外の財源確保策として、政府が保有するNTT株を売却し、完全民営化の選択肢も含めて「早急に検討すべき」だとした。決算剰余金の活用や歳出改革、為替介入の原資となる外国為替資金特別会計(外為特会)の剰余金の一定程度の活用を盛り込んだ。国債を借り換えながら60年で完済する「60年償還ルール」の見直しを巡っては、「引き続き幅広く議論を重ねていくべき」だと列挙している。
提出後、萩生田氏は記者団に「提言を踏まえ、最大限の追加財源の確保を期待する」と述べた。

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<タックスワンポイント>

二重国籍の税金はどっちに払う?  意外と多い重国籍の大人たち

日本の国籍法では、2つ以上の国籍を持つ人は22歳になるまでに国籍を選択しなくてはならない。二重国籍となったのが22歳以降なら、二重国籍となってから2年以内とされている。ただ外国籍を離脱せずにいても罰則はないため、二重国籍のままという状態も多く起きているのが現状だ。
国籍は個人のアイデンティティーでもあるため杓子定規に型にはめることは慎むべきだが、納税にあたっては各国で厳格にルールが定められている。一概には言えないものの、日本を含めた多くの国では、国籍を問わず「どこに住所(居所)があるか」と「どこで所得が発生したか」で判断している。だから日本に家がある中国人が韓国で納税するということもある。
さらに、「自国民は世界中どこにいようと自国民」という“属人主義”を採用しているアメリカでは、米国民であれば世界のどこに住んでどこで稼いでも米国で申告納税することが決められている。もちろん、これはあくまでも立法上の形式論にすぎず、納税までは強要されない。ただし税金の申告は必要で、年末調整がない米国では日本に住んでいても米国籍のある人は米国の税務当局に向けて毎年確定申告を行う必要がある。
二重国籍で特に面倒なのは相続だ。「日本の法の適用に関する通則法」によると、相続は「被相続人の本国法による」と定められているため、生まれてから死ぬまで日本を一歩も出たことのない米国人は、法定相続人の範囲や順位、法定相続分といった相続の仕方は全て米国法に従うことになる。さらに、この人が二重国籍であれば米国と日本のダブルスタンダード状態で相続が行われることになる。当然、相続の際には国際相続に詳しい専門家の力を借りることになるだろう。

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