<タックスニュース>

コロナ予算の代替財源  英国の答えは「法人増税」

英国のスナク財務相は3月3日、新型コロナウイルス対策による支出で膨れ上がる財政赤字への対応として、現在19%となっている法人税を2023年から25%に増税する方針を示した。同国が法人税率を引き上げるのは1974年以来約50年ぶりとなる。コロナ関連支出による財政赤字が各国を悩ませるなか、税の大原則である「応能負担」による回答を示した格好だ。
同日に発表された21年度予算案では、コロナ禍で打撃を受けた経済を支援する各種措置の延長が盛り込まれた。一時帰休を強いられる労働者向けの支援策を9月末まで継続するほか、日本の消費税に当たる付加価値税の減税措置を半年間延長する。そのほか、不動産購入時に課す印紙税の減免など、様々なコロナ対策を継続して実施していく。コロナ対策費には今年と来年を合わせて650億ポンド(約9兆7100億円)を支出する方針だ。
これらの支出増へ穴埋めは、同国にとって約50年ぶりとなる法人増税でまかなう。スナク氏は「この決断はきっと不人気だろう」としつつも、「企業がパンデミックを乗り越えられるよう1000億ポンドを超える支援を提供している。企業側に景気回復への貢献を求めることは公平であり必要だ」と述べ、現行19%となっている法人税率を23年4月に25%に引き上げると発表した。ただし増税後の税率が適用されるのは一定以上の利益がある企業に限定し、企業全体の1割程度にとどまる見込みだ。スナク氏は「税率変動後も英国の法人税は依然として主要7カ国のなかで最も低い水準を維持している」と強調した。
国境を超えて活動するグローバル企業の台頭に伴い、近年はそれらの企業を誘致するため各国間での法人減税競争が過熱してきた。そうしたなかでコロナ禍をきっかけに英国が恒久増税に踏み切ったことは、世界的な税制のトレンドにも大きな影響を与えそうだ。

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<タックスワンポイント>

PCR検査は結果が陽性なら医療費控除可  損金にするには全従業員を対象に

年間にかかった医療費のうち10万円を超えた部分を所得から差し引ける「医療費控除」は、適用するためにはいくつかの条件がある。例えば一概に医療費といっても、その費用はあくまで病気やけがの治療に必要な支出でなければならず、インフルエンザのワクチン接種など予防にかかった費用などは対象とならない。同じことは新型コロナウイルスのPCR検査にも当てはまり、感染疑いがあるとして医師の指示により受けたPCR検査の費用は控除対象となるが、「念のために」と自費で受けた検査代は治療に伴う出費ではないため、原則として医療費控除の対象にはできない。
しかし自発的に受けたPCR検査の費用に医療費控除を使えるケースもあり、それは検査を受けた結果、陽性となり治療に移行した場合だ。新型コロナに限らず病気が見つかった時は、その検査は治療に先立って行われる診療と同様のものとみなされ、全額を医療費控除の対象にできる。
もっとも、決して安くない検査代を所得から差し引けるのは嬉しい話だが、引き換えに新型コロナの感染が判明してしまったのなら素直に喜べるわけがない。ここはせめて、陰性であれば当面の健康を喜び、陽性なら病状が進行する前の早期発見と、医療費控除が使えることを心の慰めとするのが前向きな考え方かもしれない。
なお会社がPCR検査の費用を負担した時には、一部の役員や従業員を対象とする検診かどうかで、税務上の扱いが変わる。全従業員を対象とするものであれば福利厚生の一環として損金に算入できるが、一部の役員のみを対象とするような検診であれば役員報酬扱いとなり、役員本人には所得税が課され、会社の損金にもできないので気を付けたい。

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