<タックスニュース>

広島県廿日市市  世界遺産の宮島に入島税

全国で初めて、旅行客のみを対象とする税金の導入が決まった。広島県廿日市市議会は3月15日、世界遺産の厳島神社がある「宮島」に訪れる人を対象に100円の「宮島訪問税」を課す条例案を賛成多数で可決した。島民や通勤通学者、修学旅行生などは課税の対象から外す。当初は今春の開始を目指していたが、新型コロナの影響で足元の観光客数が減少していることを踏まえて2023年度中の施行を目指す。
観光客が来島に利用するフェリーの運賃に1回100円を上乗せして徴収するほか、年間500円で無制限に入島できるようにする。来島者数がコロナ禍以前の水準まで回復すれば、年間3億円以上の税収が見込めるという。確保した財源はトイレなど観光関連施設の拡充や渋滞対策、ごみ処理などへの活用を計画する。
市民の高齢化や若年層の流出などにより、廿日市市の税収はピークだった07年度の169億円から14年度には156億円まで減少した。一方で社会保障費が07年度の62億円から14年度に105億円まで膨張したことがきっかけとなり、入島税導入へ向けた議論が始まった経緯がある。
松本太郎市長は入島税の導入を公約に掲げて19年10月に初当選。就任後は入島税による収入を施設整備に充てることをアピールし、昨年9月に市が来島者を対象に実施したアンケートでも導入賛成が9割を超えた。
船舶運賃に上乗せする入島税は、法定外目的税として総務相の同意を得ることができれば自治体が独自に課税できる。伊是名など沖縄県の4村ですでに導入されてきたが、公平性を保つという理由で原則として島民からも徴収しており、観光客だけに課税するのは廿日市市が全国初となる。
コロナ禍により自治体の財政悪化が叫ばれており、これまで賛否あった観光税の導入が一気に加速する可能性もありそうだ。

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<タックスワンポイント>

生命保険は受取人固有の財産じゃない!?  例外が適用される「著しい偏り」

生命保険金は「受取人固有の財産」といわれる。税法では「みなし相続財産」として相続税の対象とはなるものの、民法では生命保険金を請求する権利は相続財産から除外され、原則として遺産分割の対象となることはない。保険金独自の非課税枠もあり、他の財産よりも優遇されることから、オーナー企業の後継者の納税資金や自社株対策の原資に最適といわれる。
ただし場合によっては、この生命保険金が受取人固有の財産ではなくなる時もあることをご存じだろうか。それは、特定の相続人が生命保険金を受け取った結果、他の相続人との取得財産に「著しい偏り」が出てしまった時だ。
例えば親が亡くなって3人の子が相続人として残されたケースで、相続財産が預金1500万円のみだったとする。3人で500万円ずつ分配すれば円満解決できそうだが、もし預金以外に長男のみ生命保険金2000万円が支払われていたとすればどうだろうか。長男からすれば、生命保険金は前述のとおり受取人固有の財産なので、もともと自分のものであって相続財産には含まれず、遺産分割には関係ないと主張するだろう。
しかし最高裁は、こうしたケースに対して長男にノーを突き付けている。原則として生命保険金は受取人固有の財産であるものの、「到底是認することができないほど著しいと評価すべき特段の事情」がある時には、保険金を遺産に持ち戻して分割すべきだと認定したのだ。この「特段の事情」とは、保険金の額や遺産の総額に対する比率だけでなく、同居の有無や被相続人の介護などに対する貢献の度合い、各相続人の生活実態などが総合的に考慮されるという。
複数の判例によれば、仮に金額のみを考慮して判断すると、「遺産総額に対して45%~50%を超えた保険金」がおおむね持ち戻しの対象になるようだ。先ほどの例でいえば、預金1500万円と生命保険2000万円で遺産総額は合計3500万円なので、それに占める保険金の比率は約57%となり、持ち戻しが必要ということになる。長男が受け取る遺産は生命保険金のみの2000万円、他の2人はそれぞれ預金750万円を得るのが最終的な結論となりそうだ。
遺留分についても、受取人と他の相続人に著しい差があると認められた時には、請求対象になる可能性がある。生命保険金は受取人固有の財産として様々な場面で強みを発揮するが、何事にも絶対はあり得ないということを覚えておきたい。

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