<タックスニュース>

国外取引への「二重課税」  解決長期化で中小企業に重負担

国外への利益移転を防ぐ移転価格税制の適用などにより企業に税負担が二重に課されてしまったとき、両国の相互協議によって解決にかかる時間は平均で約3年とするデータを国税庁が発表した。相互協議の発生件数が処理件数を上回る“発生超過”の状態は数年続いていて、次年度に持ち越された繰越件数は年々積み上がっている状態だ。
企業が海外の関連会社に自社商品を通常の取引価格よりも低い価格で販売すると、課税所得はその分減少して法人税負担も少なくなる。一方、海外の関連会社からすれば日本の会社から商品を安く仕入れたことで利益が増え、自国での税負担が増える。結果、本来なら日本の会社の利益となる部分が海外に移転し、税収も海外に持って行かれてしまうことになる。こうした課税所得の海外移転を防ぐため、取引価格が一般企業同士における価格に比べて不当に安い、または高いと判断された時には、そこに課税逃れの意図があったかどうかにかかわらず、一般的な価格に計算し直して、移転された利益部分に追徴課税される「移転価格税制」が設けられている。
だが企業にしてみれば、同税制が適用されて申告漏れの部分に日本で追徴課税がされると、海外で子会社が納め過ぎた分について二重課税の状態となってしまう。二重課税は自動的に救済されることはないため、申し立てることによって両国の税務当局による「相互協議」での解決を求めなければいけない。またこうした事態になることを事前に防ぐため、各国税局が設けている同税制専用の事前相談窓口などを利用することができるようになっている。
国税庁が10月20日にまとめた最新のデータによれば、2020事務年度(20年7月~21年6月)に発生した相互協議の件数は185件で、そのうち事前確認によるものが146件、移転価格税制が適用されたものその他が39件だった。一方で、相手国税当局との合意や納税者の申し立ての取り下げなどによって20事務年度に処理した件数は155件なので、30件の“積み残し”が生まれたこととなる。この積み残しの残高は、増加傾向にある。
特筆すべきは、処理事案1件当たりに要する解決までの期間だ。国税庁によれば、移転価格税制その他による事案の平均処理期間は34.4カ月と、3年弱に及んでいる。また事前確認をしたものについても、やや短いものの29.2カ月と、こちらも約2年半かかってしまう。さらに相手国の税務当局との連携が取りづらいOECD(経済協力開発機構)非加盟国に至っては、実に平均43.2カ月もの時間がかかるという

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<タックスワンポイント>

生命保険のリビングニーズは使い残しに注意  もらったからには使い切ってしまおう

生命保険の「リビングニーズ特約」では、原因に関係なく医師から余命6カ月以内と診断された場合に、死亡保険金の一部または全部を生前に受け取ることができる。契約者の「残された時間を有意義に使いたい」、「希望する高額な治療を受けたい」などの希望に応えるもので、特約を付けるのは無料か、最初から付随している保険商品も多い。
ただ、最近はリビングニーズの税務処理でのミスが頻繁に見られるという。生前に保険金の一部を受け取っていたにもかかわらず、死後に相続財産として500万円の非課税枠を適用してしまうケースだ。
被相続人が被保険者かつ保険料を負担していて、受取人が相続人であるときの死亡保険金は、契約期間中に相続が発生すると「みなし相続財産」として取り扱われる。相続税がかかってしまうのと同時に、「500万円×法定相続人の数」という生命保険金独自の非課税枠が使える。
一方で、リビングニーズ特約によって生前に本人が保険金を受け取ったとき、その給付された保険金はまるまる所得税が非課税扱いとされる。ただし一方で、同特約で生前に給付を受けた保険金は、みなし相続財産として取り扱われず、生命保険の非課税枠の適用を受けることができなくなってしまう。こうしたふたつの取り扱いを勘違いして適用してしまうケースが目立つという。
つまりリビングニーズ特約は、受取時には所得税がかからず、また受け取った保険金をすべて使ってしまえば保険金という相続財産はなくなるため相続税もかからない。しかし使い残しがあると、相続が発生したときに保険金の非課税枠が使えず、特約を使わなかったときより相続税負担が増えるということだ。もっともそれを踏まえても相続税の基礎控除額内にすべて収まる場合には納税の必要はない。

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