<タックスニュース>

教育資金贈与の非課税特例  制度終了まであと1年

子や孫1人当たり1500万円を非課税で引き継げる「教育資金贈与の非課税特例」が来年3月に期限を迎えて制度が終了するまで1年を切った。2013年の導入以来、相続の生前対策として人気を集めてきた制度だ。期限はたびたび延長されてきたものの、22年度税制改正大綱では、家庭内の資産移転に課税しないことが格差の固定化に繋がっていると指摘されたことから「不断の見直しを行っていく」とこれまでにない強い口調で制度の終了や縮減が示唆された。利用を考えているのであれば急ぎたい。
この特例は、30歳未満の子や孫の教育資金にあてるための贈与について、受け取る側1人当たり最大1500万円まで贈与税を非課税とする。信託銀行などに専用の「教育資金口座」を開設して贈与財産を管理する。受贈者は領収書類を信託銀行に提出し、教育目的で使ったことを証明すれば、贈与税の負担を回避できる。
子や孫の数だけまとまった額の相続財産を減らす節税効果が見込めるため、13年の制度開始以来、富裕層を中心に利用件数を増やしてきた。信託協会の調べによると、スタートから半年弱で制度を利用した信託の契約数は4万を超え、21年9月までの累計利用件数は24万6691件、総額は1兆8306億円にも上っている。
制度の期限は23年3月末だ。21年度に続き、税制改正を経て延長されると見る向きもある。しかし政府は22年度大綱で、教育や育児、結婚、出産、住宅取得などにかかる贈与税の非課税特例について「家族内における資産の移転に対して何らの税負担も求めない制度になっている」としたうえで「格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある」と指摘した。いよいよ制度に本格的なメスが入るとうかがわせる内容となっている。
制度の活用にあたっては、信託契約終了までに贈与財産に使い残しがあると贈与税が課税されてしまうなど、計画的に取り組まなければ思わぬ税負担が発生してしまうリスクがある。期限直前になって慌てずに済むよう、教育資金の贈与を考えているのであれば早期に検討を進めたい。

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<タックスワンポイント>

遺産相続で「限定承認」を選ぶとき  遺産の全容が分からないなら…

ある人が亡くなれば、その人(被相続人)が生前に持っていた一切の財産は、家族などの相続人が受け継ぐことになる。受け継ぐ財産の多くは、不動産、現金、預貯金、株券、美術品、車、貴金属、思い出の品などだ。だが、なかにはこうしたプラスの財産だけではなく、借金などのマイナスの財産もあり、これも相続財産に含まれる。
相続が開始すると、相続人は、(1)単純承認(プラス財産だけでなく借入金などのマイナス財産を含む一切の財産を無制限・無条件で承継することを承認すること)、(2)限定承認(相続人がプラス財産で利益を受ける範囲に限って、マイナス財産を相続する承認方法)、(3)放棄(被相続人の財産のすべてを放棄し、一切の財産を相続しない方法)――の3つのうちのどれかを選ばなければならない。
(1)と(3)は比較的単純だが、(2)の限定承認を選ぶ際には、メリットとデメリットを押さえておきたい。
限定承認の特徴は、プラスの財産の範囲内に限定してマイナスの財産を引き継ぐ形態であるため、資産の全体がマイナスであっても、プラスの相続財産以上の負債を背負うことはない点が挙げられる。プラス財産の範囲でマイナス財産を裁判所で清算してもらうが、債務を任意で弁済できなければ相続財産は換価処分されることになる。ただし、不動産相当額を用意できれば、不動産の換価処分は免れて手元に残すことが可能となる。
一方デメリットとしては、限定承認を行うには相続人全員で取り組む必要があり、一人でも反対があれば裁判所は認めてくれない点がある。さらに、限定承認では小規模宅地の特例が使えず、また被相続人から資産が譲渡されたものとして譲渡所得税が発生することも覚えておきたい。
判断はケースバイケースとなるだろうが、一般的に「マイナスはあるけど絶対に手放したくない資産がある」というときか、「プラスもマイナスも、いくらあるのは分からない」というときは、限定承認を選ぶことが多いようだ。

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