<タックスニュース>

世界で進む国別納税額の公表義務化  国税庁「慎重に検討」

どの国にどれだけ法人税を納めたかを示す「国別納税額」を自発的に公表する企業が世界的に増えてきている。企業による租税回避が大きな問題となるなかで、自社の価値を高めるための行動として評価されている。国によっては法制度化も進みつつあり、将来的に日本でも導入はあるのだろうか。
3月29日の参院財政金融委員会で、共産党の大門実紀史議員が、企業の租税回避を防ぐ取り組みである「国別報告書」を取り上げた。報告書は、多国籍企業に対してグループ企業の各国での納税額を報告させ、各国当局間で情報交換するものだ。大門氏は、欧州などでは個別企業の納税額の公表を制度化する動きが進んでいるとした上で、「(国内でも)開示の法制化を検討すべきではないか」と質問した。それに対して鈴木俊一財務相は、「国別報告制度は当局の守秘義務が前提で、公表を競争上の不利益と考える企業もある」と答え、現状では消極的な姿勢を示した。重ねて大門氏が「個別企業の名前を出さずに一定規模以上を集計して公表できるのではないか」と質問すると、国税庁の重藤哲郎次長が「個社の名前を出さないことを前提に、統計的にどのようなニーズがあるか、諸外国はどうしているかなど、慎重に検討する必要がある」と答弁した。
欧州ではここ10年ほど、多国籍企業による税逃れの実態が明らかになるに伴い、企業の納税状況への消費者や投資家の目が厳しくなっている。それを受けて企業が自主的に納税額を公開する動きが生まれ、現在では多くの企業がグループが活動する各国での詳しい納税情報を明かしている。
日本でもESG(環境・社会・企業統治)活動の一環として納税情報を明かす企業は増えつつあり、すでに開示している企業としては花王、セブン&アイホールディングス、りそなホールディングスなどがある。またアシックス、クボタ、三菱商事などが開示に向けた検討を進めているという。
租税回避防止への取り組みとして、国別納税額の公表を制度化する動きも進む。EU(欧州連合)は昨年末、EU内で事業を営む大企業に納税額の公表を義務付けるルール導入を決めた。企業の納税状況の透明化を求める声は世界的に根強く、今後もこうした動きは加速していくとみられる。国内で導入に向けた検討が始まるのは時間の問題かもしれない。

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<タックスワンポイント>

借金取りに遺産を取られないマル秘テク  「0円相続」ではなく相続放棄を

多額の借金のある人に、相続で遺産がころがりこむ当てがあるとする。もちろん遺産で借金を返済すれば丸く収まるのだが、「借金取りにみすみす取られるのも面白くない」と考えた場合、取れる手は2つある。
1つ目は、相続放棄をしてしまうことだ。
借金などの債務を持つ人が、債権者の取り分を減らすことを目的にわざと財産を減らすことを「詐害行為」という。詐害行為があったときには債権者は取り消しを求めることができるのだが、相続放棄はこの詐害行為には当たらないと過去の判例で示されている。つまり債権者である借金取りは、相続放棄をとがめることができない。相続放棄をしてしまえば、最初から財産を取得しなかったことになるので、そもそも「わざと財産を減らした」という前提が成立しないというのが理由だ。
そして2つ目の方法が、親に「財産をびた一文渡さない」と遺言に書いてもらうことだ。
税法では、遺言によって1円も財産を受け取れなかったとしても、子などの近い相続人には「遺留分」と呼ばれる最低限の権利が認められている。遺産を実質的に借金の担保として想定していた借金取りとしては、「債権者として遺留分請求を求める」と主張するだろうが、これについても裁判所は「遺留分の請求は一身専属の権利であり、債権者による介入は認められない」と判示している。
一方でやってはいけないのが、遺産分割協議を行った上で0円も受け取らないというやり方だ。この場合、相続財産は法律上、いったん相続人全員の共有状態となり、その後、協議によって最終的な帰属先が決まることになる。たとえ0円相続だとしても、共有とはいえ一度は手にした財産を手放すことは「詐害行為」に当たる。借金取りからの取消請求に対抗できないというわけだ。
もちろん相続放棄や遺言を使って借金取りから遺産を守れたとしても、借金自体がなくなるわけではない。遺産をすべて兄弟などに譲った上で本人は自己破産して、それを「逃げるが勝ち」と思うかは個人の考え方次第だが、そもそも借金苦におちいらないようにするのが最善であることはいうまでもない。

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