<タックスニュース>

通達改正案から読み解く  ハズレ馬券を経費にする3条件

 国税庁は3月2日、競馬のハズレ馬券の取り扱いに関する通達の改正案を公表した。2017年12月に最高裁が下した馬券の所得区分に関する判決を受けたもので、原則的に「一時所得」に当たる馬券の払戻金が、どれだけ恒常的かつ網羅的な購入であれば「雑所得」に当たるのかの”境界線”が読み取れるものとなっている。国税庁は4月2日まで、改正案に対するパブリックコメントを受け付けている。
 馬券の払戻金が「一時所得」に当たるか「雑所得」に当たるかが問題となっているのは、それぞれで経費として認められる範囲が大きく変わってくるからだ。一時所得であれば、収入に直接要した金額のみが経費と認められるため、収入に直接結び付いていないハズレ馬券の購入費用は経費に当たらない。一方、雑所得では経費の範囲が大きく広がり、「その他業務上の費用の額」にハズレ馬券の購入費用が含まれる。
 例えば15年に最高裁でハズレ馬券の経費性を争った男性は、30億円の払戻金を得るために29億円分の馬券を購入していた。そのうち当たり馬券の購入費用は1億3000万円だったというから、雑所得であれば課税所得は1億円だが、一時所得だと28億7000万円に所得税が課されてしまうことになる。
 最高裁は15年と17年の2度にわたってハズレ馬券が経費に当たるとの判断を示したが、雑所得として認められる払戻金の範囲がさらに広がっていけば、全国の競馬ファンから同様の訴えを起こされる可能性もあることから、今回の通達改正案は国税庁の細心の注意が払われたものとなっている。
 国税庁の示した改正案では、自動購入ソフトを利用するか、「予想の確度の高低と予想が的中した際の配当率の大小の組み合わせにより定めた購入パターン」に従って、「年間を通じてほぼ全てのレースで馬券を購入」し、「回収率が(中略)100%を超えるように馬券を購入し続けてきた」と
 いう条件に限って、馬券の払戻金を「雑所得」と認めるとしている。
 ポイントは3つで、(1)個々のレースを予想するのではなく一定のパターンに従っていること、(2)ほぼ全てのレースで馬券を購入すること、(3)年間を通じて確実に利益を上げていること――となっている。最高裁の判決でも、継続性や、個々のレースに着目しない網羅性などが雑所得として認められるための重要項目として挙げられていたことから、それらを踏まえた改正案と言えるだろう。
 改正案は4月2日までパブリックコメントを受け付け、その内容を反映して最終的に決定される。コメントはe-Gov(電子政府)のサイトから案件番号「410290068」で行うことができる。


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<タックスワンポイント>

大雪警報発令で早退の従業員に給与は必要か  会社都合であれば平均賃金の6割支給

 今年2月に北陸地方を襲った大雪では、車に閉じ込められた人の酸欠や低温化、また屋根の雪下ろし中の転落などで、福井、石川、富山の3県を中心に多数の犠牲者が出た。気象庁では早めの帰宅や不要不急の外出を控えることなどを呼び掛けていたが、行政の対応が追い付かず、貴重な命を救うことはできなかった。
 自然災害ではあらゆる被害を考えなくてはならない。大雪や台風によるスリップや、交通機関のマヒによる体調不良など、何があっても想定内だ。
 それは自社の従業員に対しても同様。一瞬の判断遅れで帰宅困難になったり、重大な事故に巻き込まれたりすることを避けるため、定時より早めに帰宅を促すときもあるだろう。従業員からの申し出であれば給料を支払う義務はないが、会社の温情とはいえ、早退が「会社都合」であれば平均賃金の60%を休業手当として支払う義務がある。
 では、例えば1日5時間働くパートさんにつき、大雪のため4時間で帰宅させたとすると、1日の支払いはいくらになるか。これは4時間分の正規の料金に1時間分の6割を足した額と考えがちだが、実は働いた4時間分だけの支払いでよい。60%というのは、あくまでも1日につき平均賃金の6割という意味であるため、すでに4時間分(80%)の支給となっているため、支払い義務は満たしているからだ。
 もちろん、労働基準法は最低の基準を定めているものであるため、社長が「それでは従業員が気の毒だ」と感じるなら支払うのは自由だ。ただし、従業員は平等に扱わないと、労働問題に発展することもあるので注意したい。


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