<タックスニュース>

先の見えない長期金利、税への影響は  役員貸付金や延滞税の金利にも

 10年物の国債などに適用される「長期金利」を巡り、8月初頭に市場が揺れ動いた。きっかけは7月末に開かれた金融政策決定会合で、日銀の黒田東彦総裁がこれまで歴史的な低水準に抑え込んでいた長期金利の上昇を「ある程度」まで容認したことだ。長期間にわたって続いてきた”異次元の金融緩和”の出口が見えたとの観測が市場を駆け巡り、10年国債の売買が活発化した結果、長期金利は一時1年半ぶりとなる0・145%まで上昇した。しかしそうした動きを抑制するように日銀が大量の「買い入れオペ」を行い、金利はその後0・10%程度まで再び下降。現在も日銀の思惑を測る市場との神経戦が続いているようだ。
 こうした長期金利の変動は、日本経済や個人の資産形成に様々な影響を及ぼし、もちろん税の世界も無関係ではない。例えば、会社が役員や従業員に金銭を貸し付けた時には、法令で定められた利息を取らなければ差額分が給与として課税されてしまう。法令で定める利息とは、会社が銀行などから借り入れて又貸しした時には融資にかかる利率が適用され、そうでなければ「認定利息」と呼ばれる数字を使う。例えば2017年中に貸し付けたものであれば1・7%だ。
 認定利息は国税庁が毎年発表するが、その下敷きとなっているのは銀行の貸出金利で、さらに基をたどれば長期金利の値動きがベースとなる。長期金利の値動きが認定利息に与える影響は顕著で、黒田総裁のもと”異次元の金融緩和”が始まる13年までに貸し付けたものにかかる利率は4・3%だったのが、翌14年からは1・9%まで一気に下がったことを見れば、その差が分かるだろう。
 他にも長期金利に影響される税の利率としては、延滞税や利子税に用いられる「特定基準割合」も存在する。こちらも金融緩和政策によって13年を境目に大きく変動し、それ以前は4%台で小幅に推移していたものが、14年以降は1%台後半まで下がっている。このように長期金利の変動は、税の世界にも大きく関わっている。
 会社からの借金や延滞税、利子税に付く利息であれば、思わず「低ければ低いほどありがたい」と考えそうになるが、特例基準割合は、何らかの理由で税務署などからお金が戻ってくる時の還付加算金の利息計算にも使われる。つまり利率が低ければ損だけでなく得も小さくなるというわけだ。

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<タックスワンポイント>

民法改正で「介護貢献」をカタチに  相続人以外でも金銭要求可

 7月に成立した改正民法では、これまでの相続のかたちを大きく変える見直しが多数盛り込まれた。そのうちの一つが、介護などで貢献した親族が金銭を要求できる権利の創設だ。法定相続人でない者であっても、生前に介護などで特段の貢献をしたと認められれば、遺産分割の際に一定の金銭を「特別寄与料」として要求できるようになる。
 これまでも、法定相続分以上に何らかの縁があった時に、貢献度を取り分に反映できる「寄与分」の制度はあった。しかし対象はあくまで相続人だけで、代襲相続などの例外を除き、配偶者、子、両親、兄弟姉妹だけということになっていた。例えば家族介護の現場では、長男の嫁が両親の世話をするというケースも多いだろうが、この貢献は遺産分割に反映されず、そもそも法定相続人でない長男の嫁は遺言などがない限り1円も受け取る権利がない。
 少子高齢化が進むなかで家族介護がさらに増加し、介護負担が大きくなっていくことから、改正民法では、こうした相続人以外の介護貢献者の権利を拡大する見直しが盛り込まれたわけだ。導入される特別寄与料は、これまであった「寄与分」の対象範囲を法定相続人以外の親族にも広げるもの。具体的に貢献度をどう評価するかは「寄与の時期、方法および程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮」して家庭裁判所が決定するとしている。詳細は不明だが、従来の寄与分にならって言えば、介護費用や生活費補助など実際に負担した実費計算が原則となるかもしれない。
 介護をすることで減った本業の収入の証明は難しく、どこまで寄与分に反映されるかは不透明な部分もあるため、介護をした人の貢献がどこまで正当に評価されるかは分からない。もし自分が介護を受ける身で、世話をしてくれた人に感謝の気持ちがあるのなら、譲りたい財産を遺言などではっきり示しておくことが一番だろう。改正民法は2020年7月までに施行される。


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