<タックスニュース>

今年こそ実現なるか  金融庁要望のM&A版事業承継税制

事業承継の際に後継者が負う税負担を免除する事業承継税制について、第三者へのM&Aにも適用するよう求める内容の要望を金融庁がまとめた。昨年度の税制改正の議論で検討対象となったものの時間切れで見送られただけに、一年越しで導入される可能性は低くない。
新型コロナウイルスの影響による景気減退を受け、金融庁の2021年度改正に向けた要望では、中小企業への投資を金融期間に促す内容などが盛り込まれた。具体的には、中小企業に融資している額に応じて、金融機関に一定割合の損失計上を認めるという制度を要望している。金融機関の税負担を減らすことが貸し出し余力の強化につながり、ひいては中小企業の経営に資するという考えだ。
そして金融庁がもう一つ要望したのが、事業承継税制の拡充だ。先の要望に関連して、金融機関などがM&Aで中小企業の事業を引き継いだ際に、株式譲渡益の納税猶予を設ける新制度を求めている。
この「M&A版事業承継税制」は、昨年の税制改正でも検討された。後継者のいない中小企業が事業を他業者に売却した際に、自社株の譲渡や事業譲渡の際に買い手側に課される税負担を猶予するというもの。承継に当たって後継者への自社株引き継ぎにかかる税負担を実質免除する「事業承継税制の特例」、個人事業者の事業用資産の引き継ぎにかかる税を猶予する「個人版事業承継税制」に続く“第3の矢”として、導入に期待がかかっていた。
甘利明・自民党税制調査会長も「やってもいいと思う」など前向きな姿勢を示していたが、承継目的でない通常のM&Aとの区別が困難なことや、ファンドなど後継者のいない企業が買収後に転売した時に事業存続を判断しづらいなどの指摘もあった。大綱が決定する12月まで議論は続いたが、結局、「事務方間でも(制度の細部を)詰め切っていない」(甘利氏)として、時間切れを迎えている。
事業承継については、金融庁以外からも拡充の要望が出ている。東京商工会議所が8月に提出した要望書では、現行制度で10年となっている制度の期限を延長するほか、後継者の役員就任要件の緩和などによる適用対象の拡大を求めた。経営者の高齢化が進展するなかで、大胆な要件緩和によって後継者を見つけやすくすることを求めた。経営者の高齢化がますます進展するなかで、21年度税制改正大綱でも何らかの施策が講じられる可能性は高いといえる。

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<タックスワンポイント>

異なる耐用年数もまとめて償却が可能  煩雑な処理を簡略化できるグループ化

減価償却の計算は、資産ごとに決められた法定耐用年数に応じて損金に算入するのが原則だが、耐用年数が異なる機械などであっても性質や用途が共通しているものはグループとして一括で減価償却計算をすることも認められている。
仮に耐用年数10年の機械の価格が1200万円、7年のものが700万円、4年のものが200万円だとして、それらが一つの生産ラインを構成するなど一体となっているなら、同じ期間でまとめて償却することも可能となる。具体的な償却方法は、全ての機械の価格の合計額2100万円を、それぞれの年間償却額(120万円、100万円、50万円)の合計額である270万円で割って算出した7(端数は切り捨て)を償却期間とする。すなわち全ての設備をまとめて7年間で300万円(2100万円÷7)ずつ償却できるということだ。
余談だが、耐用年数が最も長く設定されているのは水道用ダム(鉄筋鉄骨コンクリート造)で80年、次点がトンネル(同)で75年となっている。鉄筋(鉄骨)コンクリートの事業所は50年。同じ構造でも住居であれば47年だ。機械および装置に限ると電気業用水力発電設備と鋳鉄製導管が22年で最長。普段注目しないものは、学校の滑り台は10年、魚は2年、鳥は4年、将棋盤は5年、温州みかんは28年、乳用牛は4年、競争用の馬も4年、ビリヤード台は8年などとなっている。

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