Vol.0575
<タックスニュース>
租特が安倍政権下で6割増し 検証されぬ「隠れた補助金」
財務省は2019年度分の法人税租税特別措置にかかる適用実態調査報告書をまとめた。租特の適用件数は延べ206万2573件、適用総額は10兆6344億円で、いずれも11年度の調査開始から過去最多となった。
租特は、特定の政策目的を実現するため、期限を区切って企業や個人の税負担を軽減することでインセンティブを与える政策減税の一種だ。予算措置の補助金に比べ、手続きの手間が小さく国会などのチェックも甘いため、「隠れた補助金」と批判されてきた。
民主党政権時代の10年に租特透明化法が成立。財務省は同法に基づき、報告書を毎年国会に提出している。「公平・中立・簡素」を原則とする税制の例外である租特について、利用実態を明らかにし、その見直しにつなげるのが狙い。ただ、対象は法人税に関連するものに限られている。
報告書によると、11年度の適用件数と適用総額はそれぞれ125万件、6兆1549億円だったが、その後の第2次安倍政権で、企業の研究開発や賃上げ、設備投資を租特で後押しする姿勢が強まり、適用件数、適用総額ともに大幅に増加した。11年度と19年度を比べると、適用件数は1.6倍、適用総額は1.7倍となっている。
安倍政権は、企業の国際競争力を高めるためとして、法人税率の引き下げを実行した。その代わりに租特の見直しを進めて課税ベースを広げる方針だったが、それとは裏腹に租特の肥大化が進んでいるとみられる。
報告書は租特の適用を受ける法人名を公表していない。補助金に比べて実効的な監査が効かず、財政事情が厳しい中で各省庁が租特に力を入れる傾向がある。政策効果の検証も十分とは言いがたく、国家の根幹である租税制度の大きな課題となっている。
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<タックスワンポイント>
居抜き物件の残置物の税務処理 無償か有償か、時価との差が決め手
テナントの賃貸借契約を締結する時には、原状回復工事を済ませて、設備が何もない状態で賃貸借を開始することが原則だ。しかし前テナントや次に入居するテナントの事情により、前テナントが設置した設備などをそのままの状態(居抜き)で賃貸借契約が開始されることも決して珍しくはない。オフィスであれば間仕切りや配線、机、椅子などの設備や備品がそのままだったり、飲食店であれば厨房設備や冷蔵庫などの設備を撤去せず、そのまま次のテナントが使ったりするケースもある。
前テナントから残置物を引き継ぐ場合、有償で譲渡されるケースと無償で引き継ぐケースがあり、それぞれの税務上の引き継ぎ価額が異なってくる。
まず前テナントに購入代金を時価で支払って得た時は、残置物の購入代金を資産に計上する。例えば時価50万円の資産をその値段で購入したなら、資産の取得価額は50万円となる。
次に無償で法人が引き継ぎをした時は、たとえ無償でも資産価値のあるものを引き継いだのなら税務上は時価で譲り受けたものとして処理する。例えば無償で引き継いだ資産の時価が50万円だったなら資産の取得価額も50万円となり、引き受けた側は資産を無償で譲り受けたとして50万円の受贈益が発生するわけだ。
最後が時価よりも低額で法人が引き取ったケースで、この場合も税務上は資産を引き継いだ時の時価で取得したとして経理処理しなければならない。例えば時価50万円の資産を30万円で買ったとしても、資産の取得価額は50万円になり、時価と購入価額との差額20万円の受贈益が計上される。税務上、法人が行う取引は全て時価で行われるものとされるため、上記のいずれのケースでも、法人が引き継いだ残置物の価額は時価になることを覚えておきたい。
なお複数の資産を引き継いだ時、個々の資産の購入価額が10万円以下であれば一時の経費として処理できるが、10万円以上なら資産計上して、その使用可能期間にわたって減価償却をすることになる。前テナントとの譲渡契約において、残置物の購入価額を「総額」で処理してしまうと、個々の資産の取得価額が10万円以上かどうか分からないという問題が生じてしまうので、面倒くさくても、できるだけ個々の資産ごとの購入価額を明示しておいたほうがよいといえる。
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