<タックスニュース>

「鳩山政権に理念なし」??財務官僚が酷評

 「法人税の税率を国際的な流れにふさわしいものにしていく。減税の方向に導いていくのが筋だ」。鳩山由紀夫首相は3月12日、こう発言した。民主党は衆院選のマニフェストで中小企業の法人税率引き下げを掲げたが、財源を確保できず2010年度からの実施を見送った。同13日には消費税アップも「わたしは政権を担っている間はしない」と答えている。
 こうなると、所得税増税に頼らざるを得ない。政府税制調査会の専門家委員会は、最高税率の引き上げのほか、株式譲渡益と配当に課す10%軽減税率を2011年度中に元の20%に戻し、金融所得を勤労所得と一体で課税する制度も検討している。ある財務省幹部は「税への理念がない」と吐き捨てる。
 たとえば所得税の累進強化で富裕者層から徴税力アップは狙うが、目玉政策である子ども手当の所得制限はナシ。高校授業料の実質無償化では、裕福な家庭に比較的多いとされる私立高生に対しても、授業料を減額する。
 別の主税局幹部からは「前政権は論議に一貫性があった」と、自民党税調時代を懐かしむ声が上がる。掲げた政策の取捨選択と、増税の折り合いをどうつけるのか。鳩山政権発足から半年。政権運営の苦難はしばらく続きそうだ。

<タックスワンポイント>

申告企業7割が赤字で過去最悪  交際費は前年度分比4・6%減

 国税庁がまとめた平成20年度分の会社標本調査によると、赤字を計上した法人企業数は全260万社中185万6575社で、71・5%に及ぶことが分かった。赤字法人の割合が7割を超えるのは、昭和26年の調査開始以来、初めて。平成に入ってから最も欠損法人割合が低かったのは同2年分の48・4%で、20年弱で20%の法人が赤字に転じたことになる。
 また、営業収入金額は1419兆5138億円で前年度分から9・2%の減少。過去最悪の減少率となった。営業収入のうち、利益を計上している法人の総額は834兆5336億円で、前年度分と比べて27・0%減少した。また、利益計上法人が得た所得金額は35兆2209億円で、前年度分と比べ36・2%減。これらの減少率も過去最悪となった。
 そのほか、企業の支出を内容別にみると、まず「交際費」については総計3兆2261億円で、前年度分比4・6%の減。いわゆる「交際費の5千円基準」により大幅に減った同19年度分と違い、今年は影響を受けるような法改正はなく、この面においても、不況の影響がみられる。
 一方で、「寄付金」の支出額は4940億円で、前年度分より155億円(3・2%)増加した。子会社への支援目的の寄付などを除く、指定団体や、特定公益増進法人に対して行われる慈善寄付金についても2・2%増。不況下において意外な伸びとなった。ただしこれまでも景気などとの連動性に乏しい動きをしており、理由については個々の法人の事情による面が大きいようだ。

税理士法人早川・平会計