<タックスニュース>

二重課税 10年還付は人気取り 事務サイド見切り発車

 年金形式で受け取る保険商品の「二重課税問題」で財務省と国税庁は、過大に徴収した所得税を還付する対象を、税法上の時効の対象となる5年を超えて過去10年分とする方針を発表した。今年7月6日の最高裁判決で、年金払い型生命保険への課税が「違法な二重課税」と認定され、野田佳彦財務相がその翌日、時効分の還付にも応じる方針を表明していた。
 この大臣方針が寝耳に水だったのは、主税局と国税庁の事務方だった。税務署に保管してある税務書類は過去7年分しかなく、どうやって成り済ましなどの不正請求を排除するかが検討課題に。結局、民法の不当利得の時効となる10年で区切ることで決着した。
 実際に還付される額は「せいぜい1年目で数万円程度」(財務省)で、還付額は年々階段状に減少していく。時効になっていない分の総額が60億~90億円で、時効分もほぼ同等の見通しだが、さかのぼるほど書類の保存状況も悪くなるので、「実際に手続きをする人は少ないのではないか」との見方も出ている。
 そもそも、野田財務相が時効分還付の方針を表明したのも、「7月11日の参院選直前でもあり、菅政権の人気取りに使ったのでは」との指摘もある。見切り発車のままで、大規模な還付手続きがスタートしようとしている。

<タックスワンポイント>

忘れていませんか? マイルの税金 社長が私的利用なら課税も

 航空機業界に低価格化の波が押し寄せている。マレーシアの格安航空会社(LCC)のエア・アジアはこのほど、今年12月から羽田―クアラルンプール間の就航を発表。運賃は、片道で大手航空会社の半額程度の1万~2万5千円に設定。来年7月末まではキャンペーン価格としてなんと5千円(別に空港税など3千円が必要)にする。また、こうした低価格化の流れを受け、国内最大手のANAもLCCの設立を発表。関西国際空港を拠点とし、平成23年度の下半期に運行を開始する予定だという。すでに関西の経済団体からは、ANAのLCC設立に賛成する声が多数上がっており、出張などで積極的に利用することを表明するなど、支援の動きも出てきている。
 海外の格安航空会社には、飛行機での移動距離に応じて「マイル」がたまる、いわゆる「マイレージサービス」を提供していないものも多いが、ANAが格安航空会社に参入するとなると通常のANA便や提携航空会社の便と同様にマイルが獲得できると考えられる。日ごろから出張などでマイルをためている人にとって朗報といえそうだ。
 ところで、「出張でためたマイルで家族旅行」といった話はよく耳にするが、企業のオーナー社長が、会社名義のカードでためたマイルを私的に利用する場合は注意。マイルに関する社内規定により税務上の取り扱いは変わってくるが、場合によっては「経済的な利益の供与」があったものとされる可能性もある。この場合、臨時的な役員給与として損金不算入である上、所得税まで課されてしまう。
 また、マイレージ機能付きのカードには、そのカードを使って各種料金を支払うことで、金額に応じてマイルが付与されるタイプのものも出回っている。そこで、社長が会社の飲み会などを企画し、社長個人のカードで支払いをしてマイルを荒稼ぎしているケースもある。この場合にも、付与されたマイルは役員給与になりそうなものだが、実際のところ、そのマイルにかかる源泉所得税を把握することは難しい。そのため当局では、付与されたポイントを金品などに交換した際の一時所得として申告しているかどうかチェックしているようだ。

税理士法人早川・平会計