Vol.0103号
<タックスニュース>
納税者番号制度、ついに導入へ 税と社会保障関係に利用
政府が国民一人一人に番号を割り振る「社会保障・税に関わる番号制度」を導入する際の活用範囲が、税務と社会保障の現金給付・サービス給付とする方向になった。今年6月には、政府が複数の利用範囲の案を示して、国民から意見を募るなど着々と布石を打ってきており、自民党政権時代から長い間にわたる政府の懸案だった番号制度が実現に向けて一歩踏み出す。
すでに政府が公表していた利用範囲の案は、▽税務のみで利用するA案▽税務と社会保障分野に活用するB案▽幅広い行政サービスに利用するC案の3案。さらにB案は現金給付が対象のB-1案と、現金給付に加えてサービス給付も含めるB-2案に分類していた。
今回、政府の実務検討会が決めたのはB案。民主党税制改正プロジェクトチームは、導入時にはB-1案がふさわしいとの提言をまとめたが、実務検討会では「B-1案とB-2案をまたがる社会保障施策もあり、明確に区分できない」として6月の案を修正して、両案を一つにした。
政府は来年6月に大綱をまとめ、来年秋以降の国会に関連法案を提出する方針で、番号制度導入は法案成立から2年後になる見通しだ。自民や公明も同調するとみられ、年明け以降、与野党協議が本格化する予定だ。ただ、情報が1カ所に集まる番号制度は悪用されると被害が大きく、「プライバシー上、重大な問題が発生する」などの国民の懸念をどれだけ払拭できるかが今後の鍵となりそう。政府筋も「国民に着実に理解していただけるように慎重に進めたい」との姿勢で、政府は野党と国民に配慮しながら、慎重に大綱を策定していくことになる。
<タックスワンポイント>
年末は修繕駆け込み急増 調査で完了日が追及される?
代々の地主ならずとも、最近では個人でアパートやマンションを経営しているという人も少なくない。こういった個人事業主が、年末に駆け込みで建物に修繕を加えるということがよくある。なぜなら、建物を修繕した際の修繕費は一括損金処理できるため、税務メリットが大きいからだ。ただし、駆け込みで工事を行った場合、税務調査を念頭に入れて、さまざまなことに注意しておく必要がある。調査官は、売り上げや費用が本来の期ではない期に計上される「期ズレ」について、念入りなチェックを行うため、年末に駆け込みで工事発注していたような場合は格好の的になってしまうのだ。
税理士らによると、調査の際には①本当に工事は年内に完了したのか②代金の支払い(または支払いの請求)は年内にあったのか―について、しつこく追及されるという。そのため、工事が本当に年内に行われたことを示す証拠として、工事の施行会社とキッチリした書類のやりとりを行っておくなどの必要がある。
また、工事の内容にも注意が必要だ。工事が建物の価値を上げる「資本的支出」と見なされると、一括損金として処理できず、建物と同様に減価償却を行わなければならなくなる。修理や維持管理、原状回復に関する工事なら修繕費、改良工事など耐用年数や資産価値を増加させるものなら資本的支出となる。修繕費とするには金額的な基準があり、原則として修繕にかかる金額のうち、おおむね3年以内を周期として修理や改良をしている場合、ひとつの修理などが20万円未満ならば修繕費として計上できる。