<タックスニュース>

着々と進む「消費税増税」人事  党税調会長に藤井元財務相を起用

 野田政権発足に伴う民主党役員と政務三役人事が決まり、経済・財政分野では、党税制調査会を復活させて財政再建派の藤井裕久元財務相を会長に起用したほか、政府税制調査会担当の五十嵐文彦副財務相を再任した。東日本大震災の復興財源確保に向けた10兆円超の臨時増税や、税と社会保障の一体改革に伴う消費税増税を着実に進める布陣となった。
 民主党は2009年の政権獲得後、内閣に政策決定を一元化するため、与党税調を廃止していた。しかし党内には「決定にかかわれない」との不満が増えたため、その後、税制改正プロジェクトチーム(PT)を創設。ただ、PT座長は政府税調にオブザーバーとして加わるにとどまり、位置づけが不明確だった。党税調の復活は特に党内で反対論のある増税論に関与させ、責任も連帯させる狙いがある。
 旧大蔵省出身の藤井氏は財務相を2度務め、財政規律を重視する考えを示している。党税調会長に重鎮の藤井氏を起用することで、党内の増税慎重論ににらみを利かせる構えだ。
 一方、五十嵐副財務相は菅政権下で政府税調の取りまとめ役や、復興増税の具体案を検討する作業チームの座長を務めた。復興増税について政府は9月7日に税調を再開し、月内の与野党合意を目指している。安住淳財務相(政府税調会長)は財政政策の経験が浅く、五十嵐氏を補佐役に据えて増税論議を迅速に進める狙いがある。ただ、政府税調と党税調の力関係はまだ明確ではない。
 復興増税では政府税調が複数案を示し、党税調が党内の意見集約を進める形が有力だが、藤井氏と安住氏がそれぞれの反発をどう抑え、指導力を発揮できるか注目されそうだ。

<タックスワンポイント>

特許権を会社に譲渡  発明の対価に対する税務処理

 従業員らが職務上行った発明、いわゆる職務発明は、経営を軌道に乗せるための”起爆剤”になり得る。うまく行けば新しい収益構造を生み出してくれることもあるだろう。
 そのような職務発明であれば、他の会社に活用される前に特許申請しようと考えるもの。では、従業員が自分の発明に関連する報酬を受け取った場合、税務上はどのように処理するべきなのだろうか。
 従業員が持っている特許権を会社が使用する場合、発明者である従業員は会社から対価を受け取る。まず、発明者が特許権を譲渡した際に受け取る報酬は譲渡所得。一方で、権利を会社に譲り渡した後に成果に応じて継続的に受け取るような報酬は雑所得になる。
 また、発明者が取得した特許権などについて、会社との契約に基づく実施権(ライセンス)を設定したことで支払われるお金は雑所得。この場合、特許権等の使用料は源泉徴収の対象となるため、特許権等の使用料が支払われる際に1割(1回に支払われる額が100万円を超える場合には超える部分は2割)源泉徴収されることになる。
 さらに、特許権を申請するほどではないにせよ、従業員が事務作業の効率化や製品の品質改善、経費の節約などに役立つ、ちょっとしたアイデアを提案してくれれば会社としてはありがたい。それを期待して「社内提案制度」を設けている会社もあるだろう。この場合、アイデアが職務の範囲内であれば支給されるものは給与所得、職務の範囲外で一時に支給されるものは一時所得、範囲外でアイデア実施後の成績などに応じて支給されるものは雑所得になる。
 なお、発明者が発明によって開発された商品を仕入れて販売する場合は当然事業所得。その事業が相当な利益を生むようになれば、法人化の検討も必要になるだろう。

税理士法人早川・平会計