Vol.0647
<タックスニュース>
止まぬ大企業の「名ばかり中小化」 エイチ・アイ・エスが1億円に減資
大手旅行会社エイチ・アイ・エスが、資本金を現在の247億円から1億円まで減らすことを発表した。10月下旬に臨時の株主総会を開いて株主の承認を得る見込み。コロナ禍で多くの企業が経営難に陥るなか、税法上の優遇措置を求めて「名ばかり中小化」を選択する大企業が後を絶たない。
エイチ・アイ・エスは新型コロナの影響で主力の海外旅行事業の回復が遅れたことなどから厳しい経営状況が続いており、今年4月までの半年間の決算は過去最悪の269億円超の最終赤字に陥った。長崎県にあるテーマパーク「ハウステンボス」の運営会社の株式を香港の投資ファンドに売却することを決めるなど財務の立て直しを急いでいる。
資本金の減資も財務改善に向けた一連の取り組みのなかのひとつで、エイチ・アイ・エスは「税負担を軽くするためだ」と認めている。法人税法では資本金1億円以下を中小法人、1億円超を大法人と判定し、中小法人には800万円の所得に対する法人税率の軽減、欠損金の繰越控除、法人事業税の外形標準課税の免除など大法人にはないさまざまな税優遇が適用されている。そのほか設備投資に対する減税措置などが上乗せされることもあり、中小法人にのみ認められる優遇税制は数多い。
コロナ禍で大企業の「中小化」は相次いでおり、すでに航空会社のスカイマークや旅行大手のJTB、全国紙の毎日新聞社、液晶大手のジャパンディスプレイといった有名企業が1億円への減資を実行している。
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<タックスワンポイント>
マイホーム売却損への救済処置 損失繰り延べは4年が上限
長引くコロナ禍でも、日本の地価は都心部を中心に回復傾向に転じつつあるようだ。とはいえ地方を見渡せばまだまだ景気が回復したとはとても言えず、不動産を売っても、かつてのような利益を期待できる時代ではない。そのため、転勤などでマイホームの売却を余儀なくされたときなど、多額の損失を抱えてしまう人もいる。
こうした不動産売却損に対しては救済措置が用意されている。原則として、不動産の売却損をほかの所得と損益通算することはできないが、一定の条件を満たせば、翌年度以降の繰越控除が可能だ。
例えば、所得1000万円の人が家屋を売却して売却損が3000万円発生すると、差し引き所得がマイナス2000万円となる。売却にかかる利益が出ていないので税金も発生せず、確定申告をする必要もない。
しかしこうしたケースでも確定申告をしておいたほうがいい。マイホームを買い替えたときや、住宅ローンが残っているマイホームを売って損が出たときに限り、他の種類との損益通算が認められるからだ。さらに通算を行っても損失が残れば、翌年以後3年間にわたって繰り越すこともできる。譲渡年の損益通算と合わせて最大で4年間、所得税・住民税が免除されることもあり得る。
ただしこれらの救済措置を受けるためには、売却した敷地面積が500平方メートルを超えないこと、売却した年の所得が3千万円を超えないこと、売った相手が親子や夫婦などでないことなどの条件を満たす必要があることには気を付けたい。
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