Vol.0816
<タックスニュース>
外国通貨同士の交換で得た為替差益 最高裁「課税対象になる」と初判断
外国通貨を別の外貨に交換した際に生じた「為替差益」は課税対象の所得となるのかが争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)はこのほど、「課税対象になる」との初判断を示した。国税当局の実務に沿った判断だといえる。課税した国税側の勝訴が確定した。日本円に戻さなくても、別の外貨を取得した時点で収入の権利が確定すると結論付けた。審理した裁判官5人全員一致の意見。
判決によると、原告は2014年、スイスの銀行の口座に105億円を預けて運用を一任。銀行はこれを外貨に替え、さらに別の外貨などに交換した。東京国税局は18年、円安の進行などで為替差益が生じているのに、原告が所得を申告していなかったと指摘。14、15年分の所得について約9億3千万円の申告漏れがあったと判断した。
原告は銀行に一任していた取引での所得はないという認識で確定申告した。だが、国税当局は為替差益が「雑所得」に当たると判断し追徴課税した。原告は20年、課税処分の取り消しを求めて提訴。「取引後も、円に払い戻すまでは為替相場の変動リスクが残っており、最終的な利益は確定しない」と主張し、課税は違法だとして訴えた。
最高裁は、「日本円との関係で為替相場が変動する外貨は、外貨同士の取引が行われた時点で経済的価値が固定化」されると判示し、円換算額が所得税法の「収入すべき金額」になると指摘。円換算額から経費相当分を控除した金額が所得に当たるとする初判断を示し、原告側の上告を棄却した。一審、二審での判決も、国税側の更正処分は適法として原告側の請求を退けており、国税側の勝訴が確定した。
ただし、林裁判長ら3人は共同の補足意見で、今回の判決は為替差益の課税に明文規定がない現行法を前提とした「解釈論にとどまる」と言及。「租税法律主義の観点から望ましい状況とは考えられないし、日本の租税政策に対する国際社会からの信頼を損なう現象が出てくる可能性も否定できない。必要な法的手当てを講じていくことが強く望まれる」と付言した。
外貨建てした金融資産を日本円に払い戻した際には、差益に課税されるのが一般的だが、外貨同士の取引の場合は明確な基準がない。所得税法には、為替差益の課税時期を具体的に定めた規定がないため、課税の是非が争われる事案が増えている。国税当局は課税対象とする運用を続けており、実務を追認する司法判断になったといえる。
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<タックスワンポイント>
40万円未満の減価償却資産 すぐに損金、でも毎年税負担発生
さほど値の張らない減価償却資産を取得したときには、次の3種類の税の制度を選択適用することができる。①20万円未満の一括償却資産②10万円未満の減価償却資産③中小企業者等の少額減価償却資産の特例――の3つだ。
①の制度は、取得した資産の価額が20万円未満であれば、本来の法定耐用年数にかかわらず、3年間に分けて減価償却してよいというものだ。②の制度は、取得資産の価額が10万円未満であれば、全額を取得したその年の損金に含められる。そして③の制度は中小企業に限り、②の制度の上限額を40万円未満まで引き上げるというものだ。年間300万円までという制限はあるものの中小企業だけが利用できる税優遇となっている。
それであれば、40万円未満の減価償却資産についてはとりあえずすべて③の特例で処理しておけば簡単に思えるが、実は①②と③の特例では、大きな違いがもう一つある。償却資産には自治体が課す「償却資産税」が毎年かかる。税率は原則「評価額×1.4%」となっており、資産の数が多ければ毎年の税負担は決してばかにならない。だがこの償却資産税は、①と②の制度が適用された資産には原則として課されないというルールがあるのだ。
一方、たとえ本来は①に当てはまる資産であっても、③の特例を適用した場合には償却資産税が課されてしまう。つまり目先の全額損金化を優先して③ばかりを使っていると、本来は生じなかった償却資産税という負担が発生してしまうわけだ。
