<タックスニュース>

自公両党の税制議論  インボイス対応で苦慮

自民・公明両党の税制調査会は11月18日、それぞれ総会を開き、2023年度税制改正に向けた本格的な議論を開始した。12月中旬に与党税制改正大綱を取りまとめる。最大の焦点となるのは防衛費増額の財源としての増税だ。一方、来年10月に導入されるインボイス制度を巡って、フリーランスなど小規模事業者の税負担を軽減する策を導入する案も出ており、与党税調は検討を進める。
消費税は商品などを販売した事業者が一定の税率に基づいて計算した額を納税することになっている。消費者は消費税分を上乗せされた価格を支払っている。インボイスは、事業者間の取引で商品やサービスにかかる消費税の額や税率を正確に把握するために発行する請求書で、消費税に軽減税率が導入され複数の税率が適用されることになったことで、事業者の納税額把握のため導入が決まった。
来年10月の導入を巡っては、日本税理士会連合会が事務負担増の懸念から延期を求めるなど関係団体からは反発も強い。現行制度では、売上高1千万円以下の小規模事業者は消費税の納付を免除されているが、免税事業者はインボイスを発行できないことから、仕入税額控除を利用したい企業が免税事業者との取引を敬遠する動きが広がるリスクが指摘されている。
政府・与党内に浮上している案では、免税事業者が課税事業者に切り替えた場合、納税額を売上税額の2割に抑える措置を、インボイス導入の23年10月に合わせてから3年間の時限つきで設ける。また、1万円未満の少額取引はインボイスの発行を不要とする案なども議論の俎上に上がっている。負担軽減の措置によって制度が複雑化する懸念もあるが、ある関係省庁の幹部は支持層である産業界や業界団体に対して与党議員が配慮を示そうとしている格好だと推測する。

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<タックスワンポイント>

相続前後の預金引き出しは“争族”の元  民法改正で単独引き出し可能に

かつて銀行の預金口座は、本人が死去した後は原則として、遺産分割協議が整うまでは身内であっても引き出すことはできなかった。しかしそれはあくまでルール上の話であり、実際は亡くなったことが銀行に伝わらないうちにカードや通帳を使って引き出しや振り込みなどを行うことは普通に行われていた。
そして2019年の民法改正により、現在は遺産分割前の引き出しは法的にも「シロ」とされている。現行制度では、それぞれの相続人は各自の法定相続分の一定割合を、他の相続人の同意なく単独で引き出せる。なお引出額の上限は1つの金融機関当たり1人150万円までとなっている。
課税の面からみれば、死亡した被相続人の預貯金は相続税の対象となる財産だが、仮に死亡の直前に多額の預金が口座から引き出され、それが被相続人の生活費や医療費など、妥当な目的で使われていれば、その分は相続財産には含まれない。また、一部の相続人が被相続人の死後に葬儀費用を負担した場合にも、その分は相続税上のマイナス資産として計算することができる。
だが相続前後の預金引き出しで問題となるのは、なによりも相続人の間での揉め事の種になることだ。相続では必ずといっていいほど家族間で争いが起きるとも言われるが、実際には同居していた長男夫婦などが家や預金の全てを相続し、葬儀も全て長男の責任で済ませ、弟妹たちには預金をいくばくかでも分けることで平和裏のうちに終わることがほとんどだ。他の親族もそれを了承しているため、莫大な資産があるか、もしくはよほど仲が悪くなければ揉めることはない。
だが、もし相続前後の預金引き出しが後に発覚すれば、それは不要な火種となってくすぶることになりかねない。たとえ全てを承継する予定の息子であっても、多くのお金を動かすのであれば、相続人全員の了承を得て行うようにしたいところだ。

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