Vol.0514
<タックスニュース>
消費増税の再引き上げ狙う財務省 「しばらく身をかがめておく」
10月1日に消費税率の引き上げが行われ、キャッシュレス決済によるポイント還元などで一部トラブルがあったが、比較的順調に税率の変更が行われた。財務省は、財政健全化の立場から、できるだけ早く、さらなる引き上げを進めたい考えだが、先の視界は相変わらず、悪いままだ。
政府税制調査会(首相の諮問機関)は9月末、中長期的な税制のあり方を提言する中期答申をまとめた。10月1日に消費税率10%への引き上げがあることを控え、具体的に再増税には踏み込まなかった。中里実会長(東大大学院教授)は会議後の記者会見で、将来の消費税再増税について「歳入と歳出のバランスをみながら、政府や国会で正式に議論することに尽きる」と述べるにとどめた。
「令和時代の税制のあり方」と銘打たれた中期答申は、高齢化に伴う社会保障費の増加が国の財政を圧迫するなか、勤労世代の減少が今後見込まれるとし、社会保障財源の確保について「勤労世代の所得に負担の増加を求めることはおのずと限界がある」と指摘した。今の社会保障制度などの財源を調達する機能についても「十分果たせていない」と問題提起。社会保障の負担を広く公平に分かち合うため、「消費税の役割が一層重要になっている」としたものの、それ以上は踏み込まなかった。
その一方、個人事業主だが取引先に従属して働く人、特定の企業に属さないフリーランス、兼業・副業の拡大を受け、所得税について「働き方の違いによって不利に扱われることのない諸控除のさらなる見直し」を求めた。消費税に比べ、より踏み込んでいる。
臨時国会で安倍晋三首相は、さらなる増税について「今後10年間、引き上げる必要はない」との立場を強調した。今年7月の参院選直前にも同様の発言をしており、再びけん制した形だ。自民党税調では新たな会長に、経済産業省に近い甘利明氏が就任した。財務省幹部は「消費税の再増税については、しばらく身をかがめ、状況を見守るしかない」と話した。
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<タックスワンポイント>
遺留分は請求するにも順番がある 生前贈与は新しいものから
たとえ遺言で「末のドラ息子にはビタ一文やらない」と書かれていたとしても、子には民法で定められた最低限の遺産を受け取る権利がある。これを遺留分という。遺留分を請求できるのは配偶者、親、子までとなり、きょうだいは含まれず、親がいない場合は祖父母、子がすでに死んでいる場合は孫も遺留分を主張することができる。
遺留分を計算する上で算定基礎となる金額には、相続が発生した時の財産はもちろん、一部の生前贈与も加算される点に注意したい。具体的には、法定相続人への相続発生から10年以内の贈与と、相続人以外への1年以内の贈与は、遺産に足し戻して遺留分を計算する。法定相続人への贈与については、これまでは期限なしで過去に遡って足し戻していたが、さすがに数十年前の贈与を掘り返すのはいかがなものかとの指摘もあり、今年7月に「10年以内」に改正されたばかりだ。
さて、4人きょうだいの末っ子が実際に遺留分を請求するとなった時、一番多くの財産を生前贈与によって受け取った長兄、遺言によって少額の遺産を受け取った次兄、介護を請け負う代わりに死亡時に現金を受け取る約束をした長女、この3人の誰から遺留分を取り戻せばいいのか。遺留分の額を3等分してそれぞれから同じ額を受け取ると思いがちだが、実は遺留分を請求できる財産には決まった順番がある。
3人のきょうだいの財産を受け取り方はそれぞれ法律上の区分が異なる。次兄のように遺言で財産を受け取るのは「遺贈」、長女のように生前の贈与契約に基づいて死亡時に受け取る方法は「死因贈与」、長兄のように生前に受け取るのは「生前贈与」となる。遺贈と死因贈与は似ているが、前者はあくまで贈る側の一方的な意思であり受け取る側が断れるのに比べ、後者では両者同意の契約による贈与のため受け取る側が一方的に放棄できない点などが異なる。
そして遺留分請求は、遺贈、死因贈与、生前贈与の順となる。つまり財産を受け取れなかった末っ子は、まず遺贈で財産を受け継いだ次兄に遺留分を請求しなければならない。その結果、末っ子の遺留分の全額を充当できれば長兄と長女には何の累も及ばない。しかし末っ子の請求によって次兄の取得分が自身の遺留分にまで減ってしまうと、足りない分の請求先は次の順位である死因贈与で財産を受け取った長女に移るというわけだ。次兄と長女の二人でも末っ子の遺留分を充当できないとなって初めて、生前贈与で受け取った長兄に遺留分請求がやってくる。
もちろん家族の間で遺留分の争いなどが起きないような相続対策を講じておくことが一番ではあるものの、万が一のために、遺留分請求の順位について頭に入れておくといいだろう。なお複数の生前贈与がある時には、相続発生から近いものから順番に遺留分請求の対象となる点も押さえておきたい。
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