<タックスニュース>

黒字申告企業が8年連続増  上昇率は鈍化傾向

 2018年度の黒字申告法人の割合は全体の34・7%で、8年連続の上昇となったことが国税庁の調査で明らかになった。ただ黒字申告割合の上昇率は年々下がっている状況で、消費増税後の中小企業の負担増によって上昇率のさらなる鈍化や下降への転換が懸念される。
 黒字法人の割合は、リーマン・ショックが発生した08年度以降3年連続で過去最低を更新し、10年度には25・2%にまで落ち込んだが、その後は盛り返して増加の一途をたどっている。下降から上昇に転じた11 年度を除き、12年度から6年連続で前年比1ポイント以上の上昇を続けてきた。しかし黒字申告割合の上昇率を見ると、13年度をピークに落ち込み、18年度の34・7%は前年度(34・2%)から0・5ポイントの増加で、7年ぶりに前年度比1ポイント以下の上昇にとどまった。
 これらの黒字申告割合は繰越欠損金控除後の申告所得金額を基に集計したもので、控除前の黒字企業の割合は18年度は57・9%だった。前年度の58・2%から0・3ポイント下降している。
 この他、申告法人292万9千社の所得金額は前年度比3・7%増の73兆3865億円となり、過去最高を記録した。また源泉所得税について見てみると、18年度の源泉所得税の税額は19兆1437億円で、前年度から5・5%増え、2年連続の増加となった。給与所得が3・5%伸びたほか、配当所得は18・4%もの増加となった。

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<タックスワンポイント>

被害364億円でも振り込め詐欺は雑損控除認めず  騙された側が悪い自己責任論

 オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺、金融商品等取引名目、ギャンブル必勝法、異性との交際あっせん等々、警察庁のウェブサイトには様々な「特殊詐欺」の情報とともに、その注意点が掲載されている。
 同庁によると、2018年の特殊詐欺の認知件数は1万6494件で、前年比9・4%減と1割近くも減少した。ただ、被害額は364億円と依然として高い水準にあり、深刻な状況が続いている。17年をピークに全国で被害が相次いだ「オレオレ詐欺」は減少傾向にあり、最近は架空請求詐欺が急増しているという。
 振り込み詐欺をはじめとする特殊詐欺の被害額は数百万円から中には数千万円に及ぶものもあり、被害者のその後の生活に大きな影を落とすことになる。だが、こうした被害に対して税制上の救済措置は用意されていない。
 所得税制には、様々な被害に対する損失額を所得から減らす雑損控除という仕組みがあるが、これらの被害の対象は、震災・風水害といった自然災害、火災・火薬類の爆発など人為による被害、害虫など生物による被害、盗難、横領に限られ、「詐欺」は対象外となっている。
 災害や盗難が予期せず受ける被害であるのに比べて、恐喝や詐欺は、自分が判断する余地があった上で受けた被害というのが理由だ。この「自己責任論」は、2011年5月に国税不服裁判所で審理された振り込め詐欺事件でも適用されている。
 だが、年間に364億円もの被害が出ている状況で、一律に「判断できたはず」と括ることには疑問もあるだろう。盗難や横領と同じ扱いで何が問題なのか、今後も議論は続きそうだ。

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