<タックスニュース>

届かなかったおせち  ふるさと納税返礼品の業者が破産

 茨城県筑西市のふるさと納税の返礼品を生産していた飲食業者の「小野瀬フーズ」(同市)と関連会社の「小野瀬水産」(同)が、東京地裁から破産手続きの開始決定を受けたことが1月8日に分かった。同社が担当していた返礼品のおせちが寄付した人の手元に届いていなかったことから、筑西市が謝罪会見を開くなど話題となっていた。
 筑西市の須藤茂市長は1月6日に記者会見を開き、「本市に納税していただいている方、市民に大変な迷惑や心配をおかけし、心からお詫び申し上げる」と頭を下げた。市によれば、ふるさと納税の返礼品であるおせち料理は12月31日に寄付者に届けられる予定だったが、同日午後に「返礼品がまだ届かない」との問い合わせが相次いだ。製造元の小野瀬水産に確認したところ、配送に遅れが出ていることが判明。元日午前3時ごろに市職員が同社を直接訪れると、「生産、発注に対応できていない」との報告があったという。
 市は対象者に連絡して謝罪した上で、同社が担当するプリンやスイートポテトなど他の返礼品についても配送中止を決定。対象者には寄付金の返金や別の返礼品との交換を検討することを決め、製造が間に合わなかった原因も調査するとしていた。
 小野瀬フーズは1991年設立。飲食店を経営していたが、大手チェーンとの競争などにより客足が伸び悩み、近年は赤字経営を強いられていたという。金融機関の支援を得ながら経営再建に取り組んでいたが、今回の返礼品トラブルを受けて、先行きの見通しが立たなくなったと判断した。

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<タックスワンポイント>

不要な固定資産を有姿除却で経費計上  一度でも使えば否認の可能性大

 少し前までは社の稼ぎ頭としてフル稼働していた機械設備であっても、時代の流れとともに使用頻度は減り、いまでは全く使わなくなって工場の片隅でホコリをかぶっているということもあるだろう。解体や廃棄をしてスッキリしたいが、その費用の捻出は難しい。
 そうしたときに使いたいのが法人税の「有姿除却」だ。読んで字のごとく、実際に廃棄せずに姿はそのままでも、除却損を計上できる。以前からある制度だが、一躍注目を浴びたのが2011年の東日本大震災による原発事故だ。
 東京電力福島第一原発の爆発事故では、地域住民の多くが避難を余儀なくされたが、それは企業の社屋や工場も同様だった。放射能汚染されて今後は使い物にならなくなった建物は解体も困難であることからそのほとんどが放置されたままだが、そうした固定資産の多くで有姿除却が認められ、税務上の損失が計上された。
 原発事故は極めて大きな話であり滅多にないことだが、有姿除却はもちろん日常の企業活動のなかで生まれた放置資産についても使える制度だ。
 だが、税務署が有姿除却を認める際のチェックは厳重で、社長の「もう使わないつもり」といった程度の理由ではまず認められることはない。国税庁のウェブサイトには「特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの」と例示されていることからも、放射能汚染ほどの大事でないにしても、税務職員を納得させるには相応の理由が必要なようだ。
 また、「実は大量受注があったときに稼動してしまった」「たまに古い商品の修理依頼がくると使っている」など、完全不要でないと見られれば容赦なく否認されるので注意したい。不要資産を抱え込んでいる会社にとってはなんともありがたい制度だけに、実際には廃棄していないものを帳簿上「廃棄した」ことにする以上、それなりの体裁を整える努力は必要になる。

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