Vol.0650
<タックスニュース>
コロナ融資 「返済に不安」じわり拡大
新型コロナウイルス対策の特別融資を受けた企業のあいだで、返済に対する不安がじわじわと拡大している。現状では多くの企業では未返済か返済が始まったばかりで、今後返済が本格化していけば、さらに苦境に追い込まれる顧問先が増える可能性もある。
コロナ禍で苦しむ企業に無利子・無担保で運転資金を貸す「ゼロゼロ融資」について、帝国データバンクが8月に行った調査(有効回答1万1935社)によれば、8月時点で返済がすでに開始している企業が64.8%を占めた。
一方で融資の5割以上を返済しているのは13.3%にとどまり、3割未満が42.3%で最も多かった。また未返済や今後返済を開始する企業も32.6%と約3分の1を占めた。今後1年以内に返済が始まる企業も2割あり、ゼロゼロ融資の返済は今後いよいよ本格化していくこととなる。
しかし一部の企業では今後の返済に暗雲がただよう。返済見通しを聞いた質問では、「返済が遅れる可能性がある」(5.2%)や「条件緩和を受けないと返済は難しい」(4.8%)など返済に不安を抱えている回答が1割を超え、今年2月の前回調査から3ポイント以上増えた。また現状では予定通り返済できているという企業からも、「(コロナ禍が)長引くようであれば厳しくなることもある」(旅館・ホテル業)、「現段階では返済可能だが、今後資材の高騰の影響に限らず、電気料金等の大幅値上げなど家計を直撃するようになると一気に市場がしぼむ」(建材・家具、窯業・土石製品製造)などの懸念が聞かれた。
中小企業に保証を提供する全国信用保証協会連合会のデータによれば、融資返済が不可能な企業に代わって協会が肩代わりする「代位弁済」の実績推移は件数・金額ともに12カ月連続で前年同月を上回った。ゼロゼロ融資の返済が中小企業の資金繰りを圧迫する状況が、じわじわと顕在化しつつある状況だ。
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<タックスワンポイント>
負担付贈与債務にできない条件 お金に代えられない介護の約束など
ローン返済などの債務を引き受けさせることを条件に金銭や不動産などを贈与することを「負担付贈与」という。この債務の内容に法律的な定義はなく、家のローンの返済でも、居宅の自分が死ぬまでの使用権でもよい。最近では「財産を贈与する代わりに、自分を介護してほしい」という条件の負担付贈与もあるようだ。
負担付贈与では、贈与税を計算する際に、負担額を財産から差し引いて贈与額を計算する。例えば2千万円の現金を贈与して500万円の借金を肩代わりしてもらうケースでは、贈与税は差額である1500万円にかかることになる。
しかし負担付贈与を行ったにもかかわらず、贈与税の計算において債務を計上できないこともある。それが前述した「贈与の代わりに介護をしてもらう」というような、負担の内容が金銭に換算できないケースだ。「思いはお金に代えられない」という美談ではなく、文字通り介護負担を正確に換算することが困難であるというのが理由となっている。近年では本人だけでなく「死後にペットの世話を頼みたい」という負担付贈与も行われているが、こちらでも贈与税においては債務にできないので注意したい。贈与税を減らしたいなら、負担付贈与の内容は現金や不動産などにとどめておくのが賢明だろう。
ちなみに民法では、被相続人の介護に貢献した人が、遺産分割においてその貢献度を「寄与分」や「特別寄与料」として請求できる制度が設けられている。この制度では、介護貢献を金銭に換算できるよう、介護報酬相当額や介護日数などを用いた計算方法がしっかりと定められている。同様の計算式を負担付贈与にも用いればいい気もするのだが…。
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