<タックスニュース>

声優の5人に1人が「インボイス廃業」  発注側からの圧力も

来年10月にスタートするインボイス制度によって収入が減少するとして、声優として活動する人の5人に1人が廃業を検討していることが分かった。低収入の若年層の個人事業者ほどインボイス制度の影響を受けるとみられる。インボイス制度をきっかけとする廃業の増加は、声優業界に限った話ではなさそうだ。
調査は、プロとして活動する声優らで立ち上げた有志グループ『VOICTION』が今年9月に開始し、「声優の収入実態調査」260件、「インボイスに関するアンケート」183件の回答を得たもの。
調査では、現在1万人以上いる声優のうち7割が年収300万円以下で、とりわけ20~30代の若年層は約半数が年収100万円以下で活動していることが分かった。今回の調査に回答した層では、約90%が免税事業者に該当するという。
「インボイス制度で仕事が増減すると思うか」との質問に対して、「増えると思う」と答えたのは1%のみで、76%が「仕事が減る」と考えていると答えた。さらに23%が「廃業をするかもしれない」と答え、インボイス制度が零細事業者の事業の存続に重大な影響を与えていることが明らかとなっている。この「廃業をするかもしれない」と答えた人のうち、58%が年収100万円以下だった。ただし年代でみると40~60歳代の回答者も16%おり、低収入の若年層のみが危機感を覚えているわけではないこともうかがえる。
政府は、インボイスを理由とする免税事業者など個人事業者やフリーランスへの「買いたたき」を禁止しているが、調査ではこれに違反するとみられる事例も多く報告された。「インボイスの発行がない場合、今後の取引をしないという通告が来た」、「毎年頂いているお仕事がインボイス制度が始まるとお願いするのは難しい、と言われました」、「課税業者にならないとその分の値引き等、独占禁止法に抵触するのではと思われるような言葉をかけられた」との回答があった。インボイスがスタートする来年10月に向けて、こうした圧力が今後増えていく可能性も否定できない。

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<タックスワンポイント>

相続放棄で他の相続人の借金が増える!?  放棄するにしても話し合いは必要

親の遺産以上に残された借金が多いときなどには、相続人はプラスの財産もマイナスの財産もまとめて受け取りを拒否する「相続放棄」を選ぶことができる。相続放棄は一人ひとりに与えられた権利なので、放棄に当たっては他の相続人と意思統一したり一緒に手続きしたりする必要はない。
だが実際に放棄する際には最低限、他の相続人と話し合いをしておいたほうがいいだろう。自分が行った相続放棄によって、他の相続人の負担が増える可能性があるからだ。
例えば借金1億円を残して父親が亡くなったケースで、相続人が妻と子2人だとすると、それぞれが背負う債務は法定相続分に従って妻5千万円(2分の1)、子2人がそれぞれ2500万円(4分の1)だ。
ここで妻が相続放棄をしたとすると、妻の法定相続分が子2人に配分され、それぞれの法定相続分が2分の1に増える。相続する借金もそれぞれ5千万円となり、放棄前に比べて借金が2倍に増えてしまうわけだ。もちろんプラスの財産も2倍となるため、単純に損をするとは言い切れない。
一方、相続放棄が他の相続人に影響を及ぼさないこともある。先の例で、2人いる子のうち片方が相続放棄をしたとする。このとき妻の立場からみると、子1人が相続放棄をしたとしても自分の法定相続分は2分の1のままだ。相続する借金も、放棄前と変わらず5千万円のままということになる。ただし放棄をしなかったもう1人の子については、法定相続分が4分の1から2分の1に増えているので、相続する債務は5千万円と2倍に増えてしまっている。
相続放棄はあくまで個々の相続人の権利ではあるものの、他の相続人にも大きく影響する決断だ。他の家族のことなど知ったことではないという考えでもない限り、事前に関係者全員での話し合いで了解を得ておくべきだろう。
なお故人の借金が多いケースでは、法定相続分にかかわらず相続人全員が放棄を選びたいと考えることも珍しくない。そうしたときには全員が同じタイミングで相続放棄の手続きを進めたほうがよい。複数の相続人が一緒に相続放棄手続をすれば、裁判所に提出する戸籍謄本類などの添付資料が1通で済み、手間を大きく軽減することができる。

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