<タックスニュース>

「フラット35」不正状態を放置  会計検査院が指摘

長期固定金利の住宅ローン「フラット35」で融資を受けながら自らが居住せずに第三者に賃貸するなどの不正利用が行われていた問題で、会計検査院は10月5日、フラット35を提供する独立行政法人住宅金融支援機構(以下「機構」)に対して問題発覚後も不適切な状態が放置されていたと指摘する調査結果を公表した。本来の利用条件を逸脱した状態は計56件に上り、使われた税金は約19億円に達していた。
「フラット35」は35年固定金利の住宅ローンで、民間金融機関の融資した住宅ローンを機構が譲り受ける仕組みだ。住宅購入希望者にとっては、長期間の変動金利のリスクに影響されないというメリットがあり、国にとってはマイホーム購入のハードルを下げることで新築市場の活性化が期待できるという狙いがある。そうした制度目的を踏まえ、フラット35はマイホーム目的であることと自己居住が条件だが、近年になり、投資用のマンションにフラット35を適用する不正が問題となっていた。
検査院は今回、過去に不適正な事例が発覚した大都市にある中古マンションの購入用などの融資から計7100件を抽出し、居住実態などを調べた。その結果、自らが居住せず第三者に賃貸していたケースが45件、住宅用から事務所や店舗などに用途変更されたケースが11件あった。なかには融資当初から居住実態がないケースも5件あったという。
具体的には、東京都港区の中古マンションを別荘として購入するとして約5千万円の融資を受けながら購入から約10カ月後に第三者に賃貸した例や、約3500万円の融資を受けた利用者が後に事務所として第三者に貸していた例などが確認された。
不正利用問題が発覚した2019年以降、機構はホームページに不正利用の防止を呼びかけるメッセージを記載したり、投資目的で利用した場合は残債を全額返済することを了承する書面の提出を利用者に求めたりするなど再発防止策を実施していた。だが結果的には不適切な状態が放置されており、検査院は「今回の調査で見つかった不適切な利用実態は氷山の一角」としている。
検査院は是正の取り組みとして不正利用者への全額償還請求などを求めるが、問題はそう単純でもない。フラット35の不正利用には物件を購入した本人も関与しているものの、手口を指南して主導していたのは不動産業者とみられる。20年に機構がまとめた報告書によれば、「投資物件の購入を勧誘する複数の紹介者、特定の売主の社員、不動産仲介業者、サブリース事業者」などで構成されるグループが、購入者に対して「ローンの負担をサブリース賃料で返済できるリスクの少ない不動産投資」だと勧誘し、購入に結び付けていた。さらにその後、購入者の知らないところで住宅購入価格を水増しし、多額の融資を受けていた事例も報告されている。

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<タックスワンポイント>

生命保険は受取人固有の財産じゃない!?  例外が適用される「著しい偏り」

生命保険金は「受取人固有の財産」といわれる。民法では生命保険金を請求する権利は相続財産から除外され、原則として遺産分割の対象とならない。保険金独自の非課税枠もあり、他の財産よりも優遇されることから、生命保険はオーナー企業の後継者の納税資金や自社株対策の原資に最適といわれる。
ただし場合によっては、この生命保険金が受取人固有の財産ではなくなる時もある。例えば親が亡くなって3人の子が相続人として残されたケースで、相続財産が預金1500万円のみだったとする。3人で500万円ずつ分配すれば円満解決できそうだが、もし預金以外に長男のみ生命保険金2000万円が支払われていたとすればどうだろうか。長男からすれば、生命保険金は前述のとおり受取人固有の財産なので、もともと自分のものであって相続財産には含まれず、遺産分割には関係ないと主張するだろう。
しかし最高裁は、こうしたケースに対して、「到底是認することができないほど著しいと評価すべき特段の事情」がある時には、保険金を遺産に持ち戻して分割すべきだと判示している。「特段の事情」とは、保険金の額や遺産の総額に対する比率だけでなく、同居の有無や被相続人の介護などに対する貢献の度合い、各相続人の生活実態などが総合的に考慮されるという。
判例によれば、仮に金額のみを考慮して判断すると、「遺産総額に対して45%~50%を超えた保険金」がおおむね持ち戻しの対象になるといわれる。先ほどの例でいえば、預金1500万円と生命保険2000万円で遺産総額は合計3500万円なので、それに占める保険金の比率は約57%となり、持ち戻しの対象になるわけだ。長男が受け取る遺産は生命保険金のみの2000万円、他の2人はそれぞれ預金750万円を得るのが最終的な結論となりそうだ。

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