Vol.0028号
<タックスニュース>
「海外利益非課税制度」で潤う国内企業??
2009年度税制改正で導入された海外子会社からの受取配当金の非課税制度が、過去最悪の赤字と売上急減による手元資金不足に悩む日本企業にとって「干天の慈雨」になっている。同制度を使えば、海外子会社が海外市場で稼いだ利益を、無税で国内に還流させることができるからだ。
精密機械大手のHOYAは、オランダに置いた欧州統括子会社から国内の親会社に1200億円を配当することをすでに決定。電機大手の三菱電機も数百億円規模で国内に還流させる計画だ。
海外子会社からの配当非課税制度は昨年末の税制改正の目玉として導入された。従来は、日本の法人税の実効税率は40%前後と海外より高いため、海外で稼いだ利益を配当金などのかたちで国内に還流させようとすれば、日本と子会社所在国の法人税の差額分が新たに課税される。HOYAの例は、従来の制度ではオランダの法人税率(約25%)との差である15%分の180億円の税金が発生することになる。
こうした課税を嫌って、大手企業の多くは海外で稼いだ利益を現地での工場建設や事業拡大に再投資したり、海外にため置いたままにしており、経済産業省によるとこうした海外留保金は2006年度末で17兆円に上っていたもようだ。非課税制度の導入は、利益を国内に還流させることで、工場の建設や国内投資などを促そうというのが狙いだった。しかし、景気の急速な落ち込みで企業は手元資金不足に陥っており、新制度は国内の投資促進というよりは、海外の「埋蔵金」取り崩しによる当座しのぎという思わぬ使われ方になっている。
<タックスワンポイント>
今年のお中元は税制改正フル活用で!
今年も各デパートに特設会場が設置され、お中元商戦がスタートした。お中元にかかる費用は税務上、基本的に「交際費」。交際費については「5千円以下の飲食」にかかる費用について損金算入できる特例があるが、お中元の場合、残念ながらこれには当てはまらない。なぜなら、交際費から除くことができる「5千円基準」とは、「飲食その他これに類する行為のために要する費用」であって、単なる飲食物の詰め合わせを贈答する行為は対象外だからだ。
しかし、「広告宣伝費」として損金にできる裏ワザもある。「カレンダー、手帳、扇子、その他これらに類する物品を贈答するために通常要する費用」は交際費から除外されていることを利用し、広告宣伝的な効果を意図して、社名入りのカレンダーやボールペンなどを取引先に贈るという手段だ。「少額のものであれば広告宣伝費として差し支えない」(当局)という。
平成21年度の追加経済対策により、中小企業の交際費の定額控除限度額は年間600万円まで引き上げられている。交際費支出額×90%が損金に算入できるため、最大540万円までが損金算入可能。日ごろお世話になっている人や企業への感謝の気持ちを込め、実のあるお中元の贈答を行いたいものだ。