Vol.0008号
<タックスニュース>
政府まとめた10年展望 財政再建の見通し失う
政府はさきごろ「経済財政の中長期方針と10年展望」をまとめた。10年展望に添付された今後10年間の財政試算では、2011年度の基礎的財政収支(プライマリーバランス)は大幅な赤字となる見込み。これまで政府が目標としてきた2011年度黒字化は達成不可能となることが確実になった。また、与党内で噴出する財政出動論が一層強まるのは避けられない情勢で、財政悪化は歯止めがかからなくなりつつある。
世界経済の情勢が不透感を増す状況のなか、試算は17本のシナリオを提示した。世界経済が順調に回復し、日本経済も早期に1%台半ばの成長率に復帰するとして、かつ、消費税を2011年度から毎年1%ずつ増税したと想定しても、2011年度の基礎的財政収支は15・2兆円もの大幅な赤字となる見通し。また、消費税を10%まで増税しても、黒字化に転換するのは2018年度と、試算の最終年度にようやく達成されるに過ぎない。政府は財政再建の見通しを事実上失った格好だ。
小泉政権以来続けてきた「公共事業費の毎年3%削減」など「骨太の方針06」で定めた歳出削減策は、2011年度黒字化を目指した取り組み。この目標達成が見えなくなれば、球心力は一気に低下する。世界同時不況から脱却するには、一定の財政出動は不可欠だが、一方で選挙対策絡みの便乗的な財政拡大論にブレーキが効かなくなる恐れも強い。日本の財政再建は小泉改革以前に逆戻りする懸念が高まっている。
<タックスワンポイント>
規模によって計算方法異なる不動産貸付け
不動産などの貸付けで得た所得は不動産所得となるが、その規模が事業的規模かそうでないかで所得金額の計算が異なる。
たとえば、青色申告特別控除の場合、事業的規模なら一定要件を満たせば最高65万円まで控除できるが、そうでなければ最高10万円まで。また、賃貸料などの回収不能による貸倒損失は、事業的規模なら回収不能になった年分の必要経費になるが、事業規模でないと、収入の計上時期までさかのぼり、回収不能に対応する所得をなかったものとして再計算しなければならないなどの違いがある。
事業的規模は「社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうか」で判定する。ただし、建物の貸付けは、貸間やアパートなどの貸与なら独立した室数がおおむね10室以上である場合、独立した家屋の貸付けならおおむね5棟以上である場合なら原則事業とみなされる。