<タックスニュース>

「血税」7金融機関に投入 条件は中小への融資強化

 金融庁は9月11日、みちのく銀行(青森市)、きらやか銀行(山形市)、第三銀行(三重・松阪市)の地銀3行と、山梨県民信用組合(甲府市)に対し、改正金融機能強化法に基づき公的資金1150億円を投入すると発表した。強化法に基づく公的資金の投入は、昨年12月の施行以来、7金融機関、計2360億円となった。
 地銀3行には優先株を買い取るかたちで投入し、投入額はみちのく、きらやかは各200億円、第三は300億円。山梨県民信組は、信用組合の中央機関である全国信用協同組合連合会を通じて信託を設定。優先受益権のかたちで450億円を投入する。各金融機関は金融庁に3カ年ごとに経営強化計画を提出し、中小企業向け融資の強化などを義務付けられる。今年9月末時点での自己資本比率は、みちのくが約11.4%(今年3月末時点8.86%)、きらやかが約10.5%(同8.78%)、第三が約10.3%(同7.26%)、山梨県民信組が約16.3%(同4.06%)に上昇する。
 強化法については、ほかに経営統合を予定している荘内銀行(山形・鶴岡市)と北都銀行(秋田市)、高知銀行が申請表明をしているが、今年9月末までの申請は見送った。6月の株主総会で公的資金を受けられるよう定款変更した金融機関は、中小信金などを含めると多数ある。景気の下げ止まりで、金融業界でも一時の危機感は薄れつつある。だが、欧米の景気回復の遅れで”二番底”が来るとの予想は少なくなく、そうなれば公的資金の申請が増える可能性がある。

<タックスワンポイント>

事業承継税制 申請スタート!??気になる出足は!?

 事業承継税制の申請受付が、9月1日からスタートした。一定の要件を満たせば、株式にかかる贈与税が10割、また相続税が8割猶予され、場合によってはそのまま免除されるとあって、事業承継に悩む経営者から大いに注目を浴びた同税制。だがその要件が公開されると「厳しい」「途中で適用外になるのが怖くて申請できない」という声が相次いだ。申請開始から10日たった9月11日現在の申請者数は、「2件」という。
 納税猶予を受けるためには、相続発生前に事業承継に関する計画的な取組みが行われたという経済産業大臣の確認を受ける必要がある。ただし、被相続人が60歳未満で死亡した場合、後継者がすでに過半数の発行済議決権を単独で有している場合、公正証書遺言により取得する株式と合算すれば発行済過半数を単独で有する場合は大臣確認なしでも認定を受けられる。ちなみに、大臣確認の申請数は9月11日現在で58件。
 同制度の問題は制度適用の厳しい要件。認可を受けたものの途中で要件を満たさなくなれば、猶予されていた相続税を延滞税付きで納める必要が出てくる。税理士からは「顧客には勧められない」といった声が聞かれる。一方、中企庁担当者は、「法律制定の目的は『地域経済の活力維持』と『雇用の維持』で、雇用8割維持などはいってみれば事業承継税制の柱。変更の予定はない」と話す。

税理士法人早川・平会計