<タックスニュース>

法人税引き下げで「減収2兆円」  政府税調PTで財務省試算

 法人税率の引き下げをめぐって、経済界をバックにした経済産業省と財務省のバトルが本格化してきた。新成長戦略で、「法人実効税率を主要国並みに引き下げる」とまで譲歩せざるを得なかった財務省が、政府税調を後ろ盾に反撃の狼煙(のろし)を上げた。
 まず、政府税調の租税特別措置などに関するプロジェクトチーム(PT、座長=五十嵐文彦副財務相)で、経産省が要望する法人税率の5%引き下げを実施した場合の試算を報告。経産省が見積もった1兆円に対して、法人税に連動する地方税の法人住民税の減収分も含めて2兆円とはじき出し、減収分の財源確保を経産省に求めた。
 さらに法人税に関わる租特や、課税ベースを狭くしている政策減税を列挙し、それぞれを廃止した場合の増収額の一覧を提示。代替財源の示せていなかった経産省に揺さぶりをかけた。
 PTでは最大の租特「ナフサ免税」まで俎上(そじょう)に載り、日本経団連の米倉弘昌会長が早くも反発。ただ五十嵐座長は「ナフサに丸ごと課税するつもりはない」と、燃料として使用される一部のナフサへの免税廃止をにおわせた。燃料には課税しても、原料への免税を維持すれば、米倉会長は住友化学会長と財界トップの立場の間で揺れ動く。財務省のしたたかさが透けて見える。

<タックスワンポイント>

消費税調査、力入れてます!  昨事務年度から7千件増

 個人事業者においても、税務当局が消費税調査に力を入れているようだ。国税庁が先ごろまとめた、平成21事務年度分の個人事業主の消費税調査実績によると、同20事務年度から約7千件増え、10万2162件に上っている。
 このうち、申告漏れなどの非違があった件数は7万512件。この申告漏れ件数も昨年より3千件増となった。ただし、調査件数の増加に寄与したのは、簡単な誤りなどを文書や電話、または電話依頼などで指摘する「簡易な接触による調査」。自宅などへ調査に赴く「実地調査」件数は6万4千件から6万3千件へと減少傾向となっている。
 しかし、実地調査件数が減少した一方で、実地調査により追徴された1件当たりの税額は昨年の40万円から46万円に増加。さらに、実地調査の中でも「高額・悪質な不正計算が見込まれる」として相当な日数をかけ行う「特別調査・一般調査」により追徴課税となったものは、昨年の56万円から70万円へと大幅アップとなった。
 個人事業主への消費税調査は単独で行われるものではなく、原則、所得税の調査などと同時に行われる。その中で発覚した調査事例としては、以下のようなものがある。会社員A氏は、海外のサーバーを一括して借り上げ、副業としてレンタルサーバー事業を展開。3年で4200万円を稼いでいた。しかし、給与所得者の副業は「申告の必要がないと思っていた」とし、無申告だった。税務当局は、A氏に対して、所得税のほか、消費税についても100万円を追徴課税している。

税理士法人早川・平会計