<タックスニュース>

ムーディーズが警告  10年後”日本の信用力”は低下

 菅首相の退任をめぐる政局の混乱が、日本の財政に対する信用力に深刻な影響を及ぼしはじめた。「政府の内紛による長期財政計画の遅れで、日本の政策は迷走」。米格付け会社ムーディーズ・インベスターズ・サービスは6月27日、政府・与党が進める「税と社会保障の一体改革」の決定が遅れていることを懸念するレポートを公表した。
 レポートでは、決定の遅延は「菅首相の辞任時期をめぐる与党内の内紛が主因」と指摘。効果的な財政再建計画を打ち出さなければ、今後10年で政府の債務負担がさらに増大し「政府の信用力にとってマイナスになる」と警告した。
 ムーディーズは5月31日、東日本大震災の発生で日本財政に対するリスクが高まったとして、日本国債の格付けを「Aa2」(21段階のうち上から3番目の水準)から格下げ方向で見直すと表明。実際に格下げすべきかどうか今夏にも判断する予定だ。他の格付け会社も同様に日本財政の先行きに懸念を深めており、その唯一の処方せんとも言える一体改革の行方を注視してきた。
 しかし、退陣表明で菅政権の求心力は失墜し、首相が繰り返し指示した6月20日の決定はあっさり見送られた。民主党執行部も党内の不満を抑えられず、党の調査会を開いては議論が紛糾するドタバタ劇を展開し市場の失望を買った。「一体改革が決定しても、ねじれ国会の下では実効性を伴わず、国債の格下げは避けられない」(アナリスト)。市場ではこうした悲観的な見方が支配的になりつつある。政府・与党の迷走のつけは、国債格下げによる長期金利の上昇という形で国民生活を直撃しそうだ。

<タックスワンポイント>

会社の借金返済で自宅を売却……保証債務履行で非課税にするポイント

 経営者が自社の連帯保証人として自宅や土地を担保提供しているケースは非常に多い。会社の借金返済が滞った場合は当然、保証人である経営者に督促が及ぶわけだが、保証人がこの債務返済のために自宅などを処分する、いわゆる「保証債務履行」について、売却による譲渡所得を非課税にする特例措置がある。
 この特例の適用で欠かせないポイントは大きく3つある。ひとつは、保証債務履行としての体裁を保っていること。保証債務履行とは銀行などの債権者が、借金した本人ではなく保証人に対して督促し、保証人が肩代わりして弁済するものだ。
 そのため、経営者が自社の保証人になっているケースを考えてみると、まず手持ちの資金、預貯金から債務の弁済を履行して、その後自宅を売却した場合は保証債務履行のための譲渡とは認められない。
 また、保証履行債務のために自宅を売却したが、例えば銀行の要望に応えるために自宅の譲渡代金で一度、定期預金を開設して一定期間運用してから債務の弁済に充てたような場合もNG。これでは保証債務履行のための自宅売却ではなく、預金資産を形成するための譲渡になってしまっているからだ。
 2点目は、債務が「保証債務」であること。元から保証人として担保提供していたのならば問題はないが、会社の急激な業績悪化に伴って倒産寸前の状態で保証したものならば、それは事実上の”贈与”といっていい。税務上は保証債務とはみなされないのだ。
 そして最後に、保証人として本来の債務者である会社に求償できない状況にあることが必要だ。連帯保証人が2人いた場合は、一人で全額を弁済しても、その2分の1までが特例の対象額となるのだ。

税理士法人早川・平会計