<タックスニュース>

「大連立」は早くも頓挫?  民主”内ゲバ”に自民”嫌悪感”

 菅直人首相の退陣をめぐる民主党のドタバタ劇に、一時は大連立まで取りざたされた自民党が急速に距離を置き始めている。
 看板政策である税と社会保障の一体改革についても同様で、政府は4月に民主、自民、公明が結んだ3党合意に盛り込んだ「政府・与党は実行可能な案を可及的すみやかに、かつ明確に示す」との規定を楯に、早急に与野党協議に入りたい意向だが、自民党幹部は「民主党内で消費増税に対する反発がいかに根強いかが満天下に明らかにされた。『政府・与党決定』と言われても額面通りには受け取れない」と冷ややかで、協議開始に応じる気配はない。
 菅首相は2011年度第2次補正予算案や、赤字国債発行の前提となる特例公債法案の成立を待って今夏にも退陣する見通しだが、次期首相の選任をめぐり、党内の混乱がさらに深まる可能性もあり、「泥船には乗れない」(自民党幹部)との思惑があるようだ。
 ただ、国の財政危機が深刻化する中、消費増税は避けては通れないとの見方は各党に共通しており、自民党も当面10%への税率引き上げを目指す方針を打ち出している。次期衆院選で自民党が再び政権に復帰すれば、菅政権と同じく消費増税の判断を迫られるのは確実で、自民党内の一部からは「国民の反発が強い増税案は民主党政権にまとめさせた方が得策だ」との声も出ている。
 菅首相は「歴代の自民党政権が先送りしてきた消費増税を自らの手で打ち出すことで、実行力と責任感をアピールし、政権浮揚を図る狙いがあった」(政務三役)とされる。増税への協力が自民党にとってプラスになるか、マイナスになるか、国民の反応をにらみながらの神経戦が続きそうだ。

<タックスワンポイント>

審査請求 「一部取消」が大幅増  相続事案の発生目立つ

 国税庁は平成22年度の異議申立て、審査請求の発生状況と当局による処理件数を発表した。
 納税者が国税当局の処分に不服な場合、所轄税務署長に対して「異議申立て」を行うことができる。そして、異議申立てに対する当局の判断に納得が行かなければ、さらに国税不服審判所へ「審査請求」を行い、その裁決に納得がいかない場合は税務訴訟を提起する…というのが国税に関連する「納税者救済」の一連の流れである。
 発表によると、異議申立ての発生件数は5103件で、前年度より308件増加した。税目別では、法人税事案が唯一減少したものの、その他の税目では増加。特に消費税事案は1762件と、前年度より176件も増加している。
 一方、異議申立ての処理件数は4746件。このうち納税者の主張が全面的に認められた「全部取消」は77件で前年度より11件の増加、一部の主張が認められた「一部取消」は399件で126件減少している。また、審査請求の発生件数は3084件で、前年度より170件の減少。相続税事案が前年度比127・9%と大きく増加したものの、それ以外の税目では軒並み減少となった。処理件数は3717件で、前年に比べて1124件の増加。
 これは、平成21年度に、輸入取引にかかる消費税の事案が多く発生し、その処理が年度をまたいだことによるもの。輸入取引に関する審査請求は「貨物ごと」に行われるため、必然的に処理件数が増加したというわけだ。なお、審判所が処理した事案のうち「全部取消」は153件で前年(143件)に比べ微増、「一部取消」は326件で前年(241件)より大幅に増加している。

税理士法人早川・平会計