<タックスニュース>

福井県が廃炉中の原発にも課税  条例改正目指す

 福井県は7月9日、県内の原子力発電所が廃炉作業中でも「核燃料税」を課税できるよう、条例改正を検討する方針を明かした。核燃料税は運転中の原発を対象とした地方税で、自治体が条例などで独自に定める法定外税の一つ。
 核燃料税は福井県が1976年に初めて設け、その後各地の原発所在地の自治体も相次いで導入した。課税対象は原発を持つ電力事業者となる。従来は運転中の原発にのみ課税されていたが、2011年の東日本大震災の後、停止中の原発にも課税できるよう条例が改正された。
 福井県内には現在10基を超える原子力発電所が立地しているが、そのうち関西電力美浜原発1、2号機(美浜町)と日本原子力発電所敦賀1号機(敦賀市)の廃炉が15年4月に決定した。廃炉計画が国に認可されて実際の作業が始まると、3基には核燃料税を課税できなくなる。廃炉が決まった3基による税収は年間でおよそ6億円とみられる。
 7月9日に開かれた県議会原子力発電・防災対策特別委員会で、税務課の担当者は全国初となる廃炉中の原発への課税へ条例改正を目指す考えを示した。「取れる方向で検討を進めていきたい」と意気込みを示したが、条例の施行には総務相の同意が必要で、電力事業者からの強い反発も予想されるため、実現するかは未知数だ。

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<タックスワンポイント>

税務調査を事前にスルー!  でもなかなか普及しない書面添付

 税務調査に移行しないように税理士が事前に防いでくれることがある「書面添付制度」に関して、国税庁が今後も普及に努めることが7月10日公表の「国税庁レポート2015」で示された。しかし、制度の利用割合は法人税申告のうち1割に至っていない。なかなか納税者に制度が浸透しない背景には、税理士の多くが制度活用に消極的であるという事情がある。
 書面添付制度は、税理士が一定の書式に基づいた書面を税務申告書に添付すると、税務当局は税務調査の事前通知をする前に税理士に意見を述べる機会を与えなければならないというもの。税務当局は書面添付を「税務調査の省略を前提とした制度ではない」としているが、税理士の意見陳述で疑義が解消されれば調査に至らず、納税者は調査官からのプレッシャーにさらされなくて済む。
 税務当局は税務行政の円滑化・簡素化の観点から書面添付制度の普及に積極的な姿勢を見せている。国税庁の1年間の活動やトピックをまとめた「国税庁レポート2015」でも「この制度(書面添付制度)を尊重し、一層の普及・定着に努めています」と記している。しかし、その意気込みは書面添付制度の利用者数に十分反映されているとはいえない。
 財務省がまとめた実績報告によると、平成25年度の法人税申告全体のなかで税理士が関与している申告は87・9%で、このうち書面添付されていたのは8・1%だった。8%を超えたのは初めてであり、平成13年の書面添付制度改正で事前通知前に税理士に意見陳述の機会が設けられるようになってから添付割合は毎年上昇している。
 しかし、平成13年の制度改正時に日本税理士会連合会(日税連)は利用率の目標を「10%」と設定しており、その目標にはまだ届いていない。また、税務当局も8・1%はまだ低調な利用割合と捉えている。財務省は毎年、国税庁のさまざまな活動実績について「S+、S、A、B、C」5段階で評価しているが、書面添付制度の普及・定着に向けた取り組みが含まれている「税理士業務の適正な運営の確保」の最新評価は「A」だった。財務省はA評価の理由について、「税理士会への説明会等の評価」と「税理士会等との綱紀監察をテーマとした協議会等の開催回数」の2つの業績指標の目標値を達成したこと、税理士会との連絡協調を推進しつつ税理士に対する的確な指導監督を実施していることを高評価としたものの、「引き続き書面添付制度における添付書面の記載内容の充実および添付割合の向上を図っていく必要があること」という”道半ば”の項目がある点を総合的に勘案して「A」にしたと総括している。
 日税連や国税当局の思惑のようには書面添付の普及が進んでいない背景には制度活用に消極的な税理士が多いことが関係している。
 日税連はホームページ上の制度説明のなかで、「(税理士にとっては)余分な仕事のようで煩わしい」「書面を添付した結果、思いもよらない責任を追及されたらかなわない」「一度提出して、その後やめたら、痛くもない腹を探られないか」といった税理士の懸念を紹介している。こうした懸念は制度の実態を税理士が分かっていないためであると日税連は見ている。
 書面添付活用の有無にかかわらず、申告書の適正性を確認するのは税理士に求められる役割でもある。また、税理士が確認した範囲を添付書面に記すことで、申告書に対する税理士の責任範囲が明確になるという税理士側のメリットもある。税務調査に移行しないように事前にブロックできれば、税理士は納税者の信頼を得ることもできる。手間の増加やリスク面の不安から制度活用に二の足を踏むだけではなく、また「税務調査の立ち会いこそ納税者に税理士のありがたみを感じてもらう絶好の機会なのだから、調査を省略する意味はない」といった”税理士本位”の考え方をするのではなく、納税者にとって必要かどうかを考えて制度活用の是非を判断することを顧問税理士には望みたいところだ。そして、書面添付に消極的な税理士は、顧問先企業の申告書に虚偽やミスがあったときのリスクを感じている可能性がある。経営者がしっかりとした会計意識を持つことも制度を活用するためには不可欠だろう。

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