<タックスニュース>

5月は自動車税のシーズン  観光業者にのしかかる重負担

5月の連休明けは、自動車やオートバイにかかる「自動車税」と「軽自動車税」の納付書が手元に届く時期だ。複数の社用車を所有していればトータルの税負担も相当なものとなり、経営者にとっては毎年のことながら気が重いシーズンだが、今年はさらに、新型コロナウイルスの影響で資金繰りが苦しいこともあり、「気が重い」では済まない可能性もある。もしもの時の納税猶予の特例なども把握した上で、この時期を乗り切りたい。
自動車などにかかる税金には、自動車税と同じく保有にかかる「自動車重量税」や、取得時に一度だけ課せられる「環境性能割」などがあるが、それぞれ納めるタイミングが異なる。環境性能割は購入時に納め、重量税は原則的に車検時の代金に含まれるため、毎年この時期に納めるのは自動車税と軽自動車税ということになる。年によって数日のズレはあるものの、今年は6月1日が同税の納期限だ。
毎年、自動車税の期限内納付を忘れるという人は一定割合いて、例えば2018年の自動車税の期限内納付率は80.9%と、5人に1人が期限内納付していないことが明らかになっている。もし滞納してしまうと、延滞金の利率は納期限から1カ月は2.6%、それを過ぎると8.9%と決して低くない。
ただし納期限を1日でも過ぎてしまったら延滞税が発生するのかと言えば、そんなことはない。延滞税については、1000円未満を切り捨てるというルールがあるためだ。納期限を過ぎても、しばらくは延滞税が発生せず、その額が1000円を超えた瞬間に納付義務が発生することになる。その時は、それまで切り捨てられていた1000円未満の部分についても納めなければならない。
具体的に、どれほどの期間が経つと実際に延滞税が発生するのか。自動車税は排気量によって税額が区分され、自家用か営業用かによっても大きく税額が変わるため、納付義務の発生日をはっきり特定することはできないものの、おおよそ排気量1500ccの自家用車であれば、今年10月の中旬に延滞税の納付義務が発生する。少し大きめのSUV(スポーツ用多目的車)でも10月の上旬となる。一方、営業用車であれば、自家用車に比べて税額が大幅に低いため、延滞税の発生日もかなり遅くなるが、トラックなどは排気量が多い分、延滞税も早くかさみ、大型トラックであれば今年の9月ごろに延滞税の納付義務が発生する可能性もある。複数台持ちならば、それだけ延滞税も高額になるため、予想外に早く延滞税が課せられて慌てるという事態もあり得る。
今年はさらに、新型コロナウイルスの影響により、税金を納めたくても納められないという企業もあるだろう。複数台のバスを所有する観光業者などは海外観光客の減少による影響を直接受けていることもあり、業績悪化は深刻だ。そのような時には、地方税全般に認められている納税猶予の特例を使うことを検討したい。新型コロナウイルスによって今年2月以降の任意の期間で1カ月以上収入が前年比2割以上減少していれば、担保なし、延滞金なしで、最大1年間の猶予が受けられるというものだ。申請の際には、売上帳や預金通帳といった収入の減少を証明する書類が必要になるので注意したい。
また猶予の特例を適用できない場合でも、個別に税務署に申請すれば納税の猶予を受けられる可能性もある。ただしこちらでは延滞金を求められることに留意すべきだろう。その他、クレジットカード納付で分割払いを選ぶことでも負担を分散させられるので、当座の資金繰りが苦しければ検討する価値があるだろう。

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<タックスワンポイント>

貸倒損失の損金算入基準  債権を損失に計上できる条件

貸倒損失が出れば、会社はなるべく早い時期に損金に算入したいと思うのが当然だ。しかし、貸倒損失の計上の時期を個々の企業の判断に自由にさせると課税上の不公平が生じることから、法人税法では一定の時点で損金として認めることにしている。
その「時点」とは、「一定の回収不能という事態」を想定し、債権の全部または一部が法律的に切り捨てられた場合、法律的には切り捨てられていなくても経済的あるいは実質的に回収不能の場合、取引停止後に一定期間経過しても弁済がない場合―に認められるようになっている。
ひとつずつ見ていく。法律的に切り捨てられた債権とは、会社更生法の決定で切り捨てられることになった額や、特別清算にかかる協定の認可、整理計画の決定、または和議法の規定による和議で切り捨てられることになった額、そして整理手続きによらない関係者の協議決定で切り捨てられる額などを指す。
次に、債権が回収不能になった場合とは、債務者の資産状況や支払能力などからみて回収不能が明らかなときだ。当然、債権に担保があれば、担保の処分後でなければ損金算入は認められない。この貸倒損失は、前記の「法律的に債権が切り捨てられた場合」と違って、損金経理が要求されるため、帳簿に貸倒損失を計上して、バランスシートから債権を落として初めて損金算入が認められる。そのため、申告減算によって損金の額に算入することはできない。
そして3つ目の取引停止後に一定期間経過しても弁済がない場合とは、取引停止以後1年以上を経過し、売掛債権の総額が取り立てのための旅費にも満たないときなどだ。このときは、売掛金など継続的な取引に基づくものに限り、損金算入を認められている。そのため、貸付など一過性の取引の債権では適用できない。また、経済的または実質的に回収不能になったときと同様に、損金経理が条件とされている。このほか、備忘価額(1円)を必ず残しておくことも忘れずにいたい。

税理士法人早川・平会計