<タックスニュース>

新経済連盟の三木谷代表「所得税率を下げろ」  金融所得課税の強化に緊急コメント

IT系企業の経済団体「新経済連盟」の三木谷浩史代表理事(楽天グループ会長兼社長)は12月13日、政府・与党が検討を進めている金融所得の課税強化案に対して緊急コメントを公表し、「資本家が国内から逃げ出し、外国からも来なくなる」と反対したうえで、「むしろ税率は引き下げるべきだ」と主張した。
政府は、おおむね所得1億円を境に所得税の実質負担率が低くなる「1億円の壁」の是正に向けた対応策の検討を進めている。岸田首相は昨年9月の総裁選で、所得に関係なく税率が一律20%となっている金融所得税制が1億円の壁の主因になっていると指摘し、抜本的な見直しを掲げた。株式市場の反発を受け就任後1週間足らずで「当面触らない」と方針転換したものの、ここへきて議論が再燃し、一定の所得を超える人を対象に課税強化する案などを検討している。
三木谷氏は政府の見直し案について、「1億円の壁が問題なのだとするのであれば、むしろ所得税の最高税率を下げる手段もある」と提起した。最高税率を引き下げるべき理由として、(1)配当やキャピタルゲインに対する課税は法人税支払い後のものであり、そもそも二重課税で資本効率を下げている、(2)国内外から投資や人を日本に呼び込むことへの著しい悪影響がある、(3)個人の所得税(住民税を含む)の最高税率は55%であり、相続税も含めると100稼いでも20も残らず世界最高水準の税率となっている、(4)成功者に対するさらなる増税の可能性の予告を意味し、これから起業しようとしている人に対して極めてネガティブなメッセージとなる――といった点を挙げた。
また、富裕層に対する課税強化が市場に悪影響をもたらした事例として米・カリフォルニアを挙げ、「税金が高いことにより資産家や投資家が逃げ出す『ブレインドレイン(頭脳流出)』が起こり、町も荒廃してきている」と指摘した。

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<タックスワンポイント>

贈与税の非課税特例は「直系」のみ  「妻の実家からもらった」通用せず

国立社会保障・人口問題研究所が2015年に行った調査によれば、独身者が結婚しない理由や既婚者が子どもを持たない理由を見ると、「経済的な不安」が他の理由を引き離して圧倒的に多かった。新型コロナウイルスによって経済がますます冷え込むなか、多くの若者が家庭を持ちたくても持たない状況に置かれている。
少子化を解消すべく国は幼児教育の無償化などを進めている一方で、税金面からも支援策を用意している。それが「結婚・子育て資金の一括贈与の特例」で、これは結婚、出産、育児のための資金として直系の子や孫などへ一括贈与したときに、受贈者1人あたり1千万円(結婚資金の場合は300万円)までが非課税になる制度だ。
実際にどのような費用が対象になるかというと、結婚費用であれば、結婚式や披露宴の開催費用、結婚をきっかけに引っ越す際の転居費用、新居の敷金や礼金、3年以内の家賃などが該当する。逆に対象とならないのは、婚活費用、エンゲージリング、新婚旅行代などだ。
次に出産費用としては、人工授精などの不妊治療代、妊婦健診の費用、出産までの入院代や分娩代、産後検診などが対象となるが、海外に渡航しての不妊治療や処方せんに基づかない医薬品代などは対象にならない。
最後に育児費用としては、子の治療費、幼稚園や保育園への入園料や保育料、園内行事への参加費などが対象となる。こちらでも処方せんに基づかない医薬品代などは含まれないので気を付けたい。
注意すべき点としては、近年の税制改正で、贈与を受ける側の子や孫に所得制限が設けられた点が挙げられる。現在では、贈与を受ける側の前年の所得が合計1千万円を超えていると、非課税特例の適用は受けられない。
ここで、「それなら所得のある自分ではなく妻が贈与を受ければいい」と考えるかもしれないが、それはNGだ。この特例の対象となるのは、あくまで“直系”の子や孫への贈与のみ。つまり妻の実家や夫の実家からの贈与は、非課税とはならない。同様に、叔父や叔母、兄弟からの贈与も対象とはならず、あくまで非課税で贈与できるのは父母(養父母)、祖父母、曾祖父母だけと覚えておきたい。

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