<タックスニュース>

お布施1.5億円を私的流用  “坊主丸儲け”に当局のメス

和歌山県で寺院を運営する二つの宗教法人が、檀家から受け取るお布施を私的に流用し、大阪国税局が計約1億5000万円を「隠し給与」と判断して所得税の徴収漏れを指摘したことが判明した。宗教法人は、お布施など宗教活動にあたる収入には課税されないが、法人が住職や職員に支払う給与や報酬に対しては所得税がかかり、法人は源泉徴収義務がある。
関係者などによると、住職らは非課税のお布施を生活費や貯蓄に回し、私的流用が常態化していた。法人担当者は「お布施は給与としては払っていない」などと説明していたという。
税制上の優遇措置を受けている宗教法人の所得隠しは後を絶たない。過去には2009年に長野などでラブホテルを経営していた宗教法人が、宿泊料などの一部を非課税の「お布施」として売り上げから除外する所得隠しを国税庁に指摘された。2013年には「ハンドパワーで病気を治せる」と称して有料セミナーを開いた会社の経営者らが、受講料を宗教法人の口座に振り込ませ、寄付と装って所得を隠したとして法人税法違反容疑で逮捕されている。
1995年の宗教法人法改正で、年間の収入が8000万円を超える法人には収支計算書を作成し、都道府県や文化庁に提出するよう義務づけられている。しかし、自治体側のチェック体制は不十分なことが多く、各地の国税局が税務調査を実施するなどして納付漏れを監視しているが、追徴課税される宗教法人は少なくない。大阪国税局では過去3年間の調査件数が756件に上り、約7割の559法人が「隠し給与」などを指摘された。

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<タックスワンポイント>

役職者だけの健康診断は損金にできず  「一定年齢以上」などの普遍的な条件を

役員や社員にかかわらず同じ内容の健康診断を受けさせていた会社が、高齢化した経営陣が大病を患うと事業が立ちゆかなくなるリスクを踏まえ、通常の診断より詳しく調べてもらえる人間ドックを受けることにした。その費用は通常の診断より高額になるが、これを今までどおり全額損金としてよいのか。
社員に受けさせる健康診断の費用は、原則として福利厚生費として全額を損金にできる。ただし、それはあくまで全員が同じ条件のもとで診断を受けられることが条件だ。一般の社員が受ける健康診断より高額な人間ドックを役員だけ受診するようなケースでは、その人間ドックの費用は役員への報酬とみなされ、福利厚生費には当たらない。このような特定の人だけを対象にした扱いは、その人に特別な経済的利益が発生するので、税務上は報酬を受けた時と同じ扱いになる。
特別扱いをしていたとしても、相手が一般の社員であれば、本人には給与課税がされる一方、会社はその支出を損金にできるという点では変わらないかもしれない。だが相手が役員である場合、その支出は損金算入に厳しい条件が設けられている役員報酬となり、損金にもできなくなる。本人には所得税、会社には法人税が課されるという、いいところなしの結果だ。
こうした事態を避けるためには、「一定年齢以上の希望者は全て検診を受けることができる」というように、ルールに普遍性を持たせることが重要だ。このルールであれば、対象者を選んでいるわけではなく平等と言えるので、費用を福利厚生費として損金にできる。結果として条件を満たせる人が役員ばかりになったとしても問題ない。

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