<タックスニュース>

「異次元の少子化対策」の財源  社会保険料の負担増へ

岸田文雄首相が掲げる「異次元の少子化対策」を巡り、政府は子ども関連予算の収支を明確にするため、新たな特別会計を設ける検討を始める。社会保険料に上乗せして財源を確保する案を検討しており、新設する特別会計で管理する考えだ。月内にも本格的な議論が始まる見通しで、6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」への反映を目指す。
少子化対策の予算は、省庁ごとに財源の区分などが異なる。こども家庭庁が所管する児童手当や保育所運営費は一般会計からの拠出や企業からの拠出金が充てられる。育児休業給付の予算は厚生労働省が扱い、保険料を労働者と企業で折半する雇用保険料を原資にしている。特別会計に子ども関連予算を一本化することで、巨額になる予算の全体像を見えやすくしたい考えだ。
一方で、目玉政策となる児童手当を巡っては、第3子以降の支給額を1人当たり月3万円に拡充する案を軸に調整が進む。現在の児童手当は、中学生までの子どもを持つ世帯に原則、第1子と第2子には1人当たり月1万円(0~2歳は1万5000円)、第3子以降は同1万5000円(中学生以降は1万円)を支給していて、これまでの支給額から倍増以上となる。必要な財源は「(第3子以降の場合だと)数千億円レベルで収まる」(自民党幹部)ため、医療保険の保険料を上乗せして財源を確保し、消費税を含めた増税は避けられるという。
政府は多子世帯を積極的に支援する姿勢をアピールし、企業からの拠出金も含めた新たな特別会計を設けることで収支の透明性を担保する狙いだ。「複数の政策が絡み、入りと出が混同しやすくなる。負担する側に協力を求めない中、(特別会計での管理は)理にかなっている」との見方だ。ただ、少子化対策の肝となる児童手当は所得制限の撤廃を求める声が与野党に根強くあり、文言の修正なく政府案が骨太に盛り込まれるかどうかが焦点となりそうだ。

税、申告、事業承継のお悩みは無料相談実施中の税理士法人早川・平会計までどうぞ

<タックスワンポイント>

資本的支出か修繕費かの境界線はどこ?  詳細な資料とプロの後押しが決め手

賃貸アパートや社屋を修理したときの支出が、原状復帰のための費用である「修繕費」か、資産価値を高めるための「資本的支出」かの判断は常に迷うところだ。その境界線を、国税不服審判所の裁決事例から探ってみたい。
費用が「修繕費である」ということを認めさせるには、まずは工事内容を明確にすることが大前提だ。コンクリートの下地工事が争点となった裁決では、納税者が「機械取り替えに伴う工事概略図」と「作業日報」の写しが添付された「工事施工内容確認書」を提出したところ、「修繕費」として損金の額に算入するのが相当との主張が認められた。ポイントとなったのは、施工内容が分かる書面の存在だ。もしも詳細な内容がない「〇〇工事一式」といった書面しかなかったなら、納税者の主張は通らなかったかもしれない。極論すれば明細を出す工事業者だったかどうかがカギともいえる。
2つ目の事例は、建物の「出入口の工事」と「照明の取り換え」、「地盤沈下による水漏れを止める工事」の3点が争われた裁決だ。結論としては、前2つは資本的支出とされたが、水漏れ工事だけは修繕費と認められた。ポイントとなったのは、やはり詳細な証拠資料の提示があったことに加えて、施工を担当した業者が、維持管理のための工事であると具体的に証言したことだった。プロの援護射撃が効いた一例だ。
最後は、ポンプの漏えい対策として設置した「メカニカルシール」という部品の支出を巡って争われた事例をみてみる。国税当局は機材が特殊なものであることを理由に、固定資産の価値を高めるものと主張したが、審判所は「あくまでもガスの安全性を回復する修繕費」と修繕費扱いを認めた。どれほど特殊なものであっても、きちんと説明ができれば一様に資本的支出にされるのではないことを示したケースだ。

相続専門の税理士による、相続、生前対策、事業承継のご相談は、初回無料で実施中です

税理士法人早川・平会計