Vol.0700
<タックスニュース>
政府の経済対策 基金創設ラッシュ
政府の経済対策で、基金の創設や拡充が目立っている。先を見通せない新型コロナウイルス禍を機に金額が急増したことに専門家は警鐘を鳴らしているが、財政規律の緩みは簡単に戻りそうにない。
基金は複数年度分の資金を一括して確保できるため、中長期にわたる政策に柔軟に財政支出ができる。ただし、本来は年度内に使い切ることが原則の国家予算において、あくまでも例外だ。2019年度までは年数千億円程度だったが、コロナが流行した20年度以降、年4~9兆円程度が措置されている。
今回の経済対策では、小中学生に1人1台の学習端末を配る「GIGAスクール構想」関連で、端末の更新費用にあてる基金が創設されることになった。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)に新設される「宇宙戦略基金」は企業や大学での先端技術開発や実証実験、商業化の支援に利用する。要求段階ではそれぞれ1兆円程度の規模だった。
与党の会合では基金化を求める意見が相次ぎ、DXや半導体を促進する基金も拡充される。基金関連だけで数兆円が確保される見通し。
基金が増える背景には「使い勝手の良さ」がある。一括計上で巨額の予算を確保できたように見えるため、政治家は支持団体などへのアピールに利用しやすい。要求官庁側には、財務省の厳しい査定を毎年度受けなくてよい利点が生じる。検証資料は担当省庁が毎年発表する「基金シート」しかなく、運営は公益財団法人などが担うことが多いため、会計検査院や財務省の目もかいくぐりやすい。
内閣府によると、22年度末時点の基金残高は前年度比3.6兆円増の16.6兆円だった。財政に詳しい専門家からは「多くの基金は規模ありきで作られ、数年分の予算をまとめて使ってさらに予算要求するなど計画性に欠ける。緊急性があり、重点的に取り組むべき政策には基金ではなく当初予算をつけるべき」と疑問視する声が上がっている。
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<タックスワンポイント>
弱気相場で使える節税テク 損益通算で翌年の税額を削減
長引く不況や不安定な世界情勢もあって、相場の世界でも明日の動向を読むのはますます難しい時代となっている。株価が落ち込むと気分も落ち込んでしまうが、そういうときこそ、弱気相場だから可能な節税策がある。
上場株式や上場投資信託の売却損は、確定申告で節税ができる。本来なら損失は申告不要だが、あえて分離課税の20.315%の譲渡所得で申告することで、一緒に申告する配当益や譲渡益と相殺して課税所得を引き下げるわけだ。さらに今年の運用益と相殺しきれないときには、翌年以後3年間、繰り越すことも可能だ。借金して投資しているなら、借入利子も譲渡所得の費用にできる。
この節税策を使うには注意点もあり、例えば翌年以後も必ず連続して申告することを忘れてはいけない。最初の年に申告したものの翌年は取引がないから申告しないケースでは、翌々年に損失を繰り越せなくなる。またNISAなど、もともと運用益が非課税の投資だと節税のしようがない。同様に、非上場株式も損失を繰り越せず、売却損が生じても0円扱いとなる。さらに損益通算ができるのは同種の配当益や譲渡益とだけで、給与所得や不動産所得など他の所得との相殺ができないことに留意したい。
上場株式でなくても、外国為替証拠金取引(FX)の損失も、来年以降3年間繰り越して翌年や翌々年に生じた運用益と相殺できる。こちらは譲渡所得ではなく「先物取引等に係る雑所得」となり、先程の上場株式などの損失とは別扱いなので注意が必要だ。FXの損益も同じ所得区分の先物取引としか相殺できない。損益通算ができるのは商品先物や金融商品先物、カバードワラントの差金決済の損益などだ。
なお弱気相場は生前贈与のチャンスでもある。株や仮想通貨を贈与すると贈与税がかかるが、その基準となる評価は「贈与した時点の時価」で行うためだ。相場の下落局面で贈与したなら、贈与した金融商品の評価額も低くなり、その分贈与税を抑えられる。
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