<タックスニュース>

近江牛はうちの特産だ!  ふるさと納税で自治体対立

地場産品でなくても県内の有名特産品であればふるさと納税の返礼品にできる「地域資源」制度を巡り、市と県の間で対立が起きている。国は5月24日、滋賀県近江八幡市からの訴えを受け、同市の地場産品である「近江牛」を地域資源に指定した滋賀県の手続きに問題がなかったかを審査する初の会合を開いた。人気の特産を持つ自治体とそれ以外の自治体の“格差”を是正すべく導入された地域資源の仕組みだが、新たな自治体間対立の火種となってしまった形だ。
ふるさと納税の返礼品を巡る基準は、2019年に厳格化された。それまで返礼品競争が過熱する過程で、姉妹都市や何かの縁のある地域といった理由を付けて特産品以外の返礼品を送る自治体が絶えなかった反省を踏まえ、返礼品の価値を寄付金の3割以下に規制するとともに、原則としてその自治体で生産や加工をしている地場産品以外は認めないとする基準に改めた。
しかし主だった特産のない自治体から、「人気のある特産品を持つ自治体とそれ以外の格差が広がるだけだ」との声を受け、総務省が導入したのが「地域資源」制度だ。同制度では、全国的な知名度がある特産品を都道府県が認定すれば、その都道府県内のすべての自治体が返礼品として利用できるようになる。これまで宮城県の「笹かまぼこ」、兵庫県の「但馬牛」などが認定地域資源として、返礼品に活用されてきた。
そして滋賀県が今年4月に「ふなずし」と併せて「近江牛」を新たに地域資源として認定したところ、近江牛の主要産地である近江八幡市が不服として、地方公共団体同士の争いを処理する自治紛争処理委員に審査を申請したのがトラブルの発端だ。同市は「主要産地の自治体が同意していないのに地域資源として認定したプロセスは問題がある」と主張し、一方の県は「意見集約に時間をかけていて、プロセスに問題はない」として全面的に争う姿勢だ。
結論は今年8月初旬に出される予定だが、その間にも近江牛を返礼品に加える自治体は増えつつある。すでに県内の多くの自治体が近江牛を返礼品にして寄付を集めていて、今後も野洲市などがラインナップに加える方針だという。
ふるさと納税はこれまで、税収を奪われる都市部と奪う地方、特産品で寄付を集められる自治体とそうでない自治体、規制に躍起になる国と一部自治体など、多くの対立を生み出してきた。19年の制度改正により事態は落ち着いたかに見えたが、またこうして新たな対立が生まれ、制度のあり方を問う声が再び上がることは避けられない。

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<タックスワンポイント>

マイカー通勤は合理的経路なら手当は非課税  16年度改正で限度額は15万円に

毎日の通勤にかかる費用は、通勤手当や定期券として給与に加算して支給される。ただし、これらの費用は合理的な運賃額の範囲内であれば課税されないことになっていて、1カ月当たりの「非課税限度額」を超えなければ源泉徴収の対象にならない。ここで気になるのが、その非課税限度額はどのように決められるのかということだ。
電車やバスなどの公共交通機関のみを利用しているときの非課税限度額は、通勤のための運賃・時間・距離などの事情に照らして、「最も経済的かつ合理的な経路および方法」で通勤した場合の通勤定期券などの金額とされている。なお最も経済的かつ合理的であっても限度はあり、その上限はかつて月10万円だったが、2016年度からは月15万円に引き上げられている。
遠距離通勤者が新幹線を利用した場合の運賃も、「経済的かつ合理的方法」であれば前述の限度額までは非課税対象だ。ただし、さすがにグリーン車料金まで非課税にすることはできない。非課税となるのは、あくまで自由席の料金と覚えておきたい。
最近では、新型コロナウイルスへの感染リスクのある満員電車は避けたいということで、マイカーや自転車での通勤に切り替えた人もいるだろう。マイカーや自転車のみで通勤している人については、公共交通機関とは別に、ガソリン代や駐車場代について非課税限度額が設けられている。片道の通勤距離に応じてそれぞれ上限が定められていて、例えば片道2キロ~10キロであれば月4200円まで、片道10キロ~15キロであれば月7100円までなどとなっている。最大は片道55キロ以上の3万1600円で、逆に2キロ以内は全額が課税対象だ。ちなみに55キロというと、東京駅からの距離でいえば神奈川県平塚市、茨城県つくば市、千葉県成田市などに相当する。
なお通勤手当は労働基準法上の賃金に当たり、「通貨払い」が原則だ。ただし従業員の過半数で組織する労働組合と協定を結べば、現物(定期券)で支給することも認められている。

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