<タックスニュース>

デリバティブ取引を損益通算対象に  金融庁の研究会が論点整理

金融庁の「金融所得課税の一体化に関する研究会」が、損益通算の対象をデリバティブ取引まで拡大することに伴う課題について論点整理を取りまとめた。
現在、金融商品間の所得の損益通算については、上場株式等の配当・譲渡所得や特定公社債等の利子・譲渡所得について可能となっているが、先物・オプションなどのデリバティブ取引は上場株式等との損益通算の対象に含まれていない。
論点整理では、デリバティブ取引についても損益通算の対象に含めることにより、「既に損益通算対象の金融商品とデリバティブ取引との間で課税の公平性・中立性を図ることになり、また両者の税制上の取扱いの差異がなければ、簡素で分かりやすい税制の実現にもつながる」との見解を示している。
同研究会では金融庁の来年度税制改正要望に、損益通算の対象、租税回避防止策、個人投資家の利便性、個人投資家への影響などについて検討を行うことが必要であるとしている。
損益通算の対象では、個人投資家が行うデリバティブ取引には、市場デリバティブ取引と店頭デリバティブ取引があり、その主な原資産には、有価証券関連、コモディティ関連、金利・為替関連等があるが、金融所得課税の一体化の対象としては、「有価証券市場デリバティブ取引」について損益通算の対象としていくことが適切との考えを示している。
租税回避防止策では、デリバティブ取引への時価評価課税の導入は、実現損だけでなく含み益に対しても課税されることとなるため、デリバティブ取引の「売り」と「買い」を両建てし、損失があるポジションのみ実現損として損益通算する「ストラドル取引」に対する有効な租税回避防止策になり得るとしている。しかし、個人投資家の場合には、余剰の現金不足もあることから、デリバティブ取引の時価評価を事前に届け出た者のみ時価評価課税(損益通算)を認めれば十分との意見があった。
個人投資家の利便性では、税務当局における行政運営コストは重要な要素であることから、デリバティブ取引を上場株式等との損益通算の対象とする場合は、「特定口座の活用が考えられる」とし、特定口座でデリバティブ取引を取り扱うことができるようにすることで、「幅広い個人投資家にとっての利便性の向上が期待でき、さらに特定口座において源泉徴収が可能となれば、円滑な納税に資することになる」と、金融機関がその利用に向けて取り組むことが望ましいとしている。
個人投資家への影響については、「個人投資家の税務手続が有価証券市場デリバティブ取引とその他のデリバティブ取引で分別して行われることとなり、煩雑になる」、「これまで認められてきたデリバティブ取引内での損益通算が、その他のデリバティブ取引との間では認められなくなる」とし、デリバティブ取引と損益通算できなくなることは一部の個人投資家にとってデメリットとなる面もあるが、個人投資家の多くが主として株式取引を行っていることを考慮すると、「デリバティブ取引内の損益通算より上場株式等との損益通算のほうが、全体として得られるメリットが大きい」ことを強調している。

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<タックスワンポイント>

従業員に渡す食事代が非課税になる範囲  給与所得になると社会保険料も増える

少子化が進むなか、多くの企業が従業員の定着率を上げたうえで優秀な人材を新たに呼び寄せたいと考えている。とはいえコロナ禍で経営状態は順風満帆とはいえず、賃上げにはどうしても限界がある。そこで非金銭報酬として福利厚生を手厚くしようと思うが、社宅や豪華な旅行を準備する余裕はない。そんな中小企業が、まず手を付けやすい福利厚生の一つが、食事の提供だ。
例えば企業が仕出し弁当などの食事を提供するとして、その食事代は課税対象になるのだろうか。せっかく従業員サービスだと思って実行しても、給料扱いで課税されては従業員も経営者も面白くない。給与所得になるということは、健康保険料や厚生年金保険料、雇用保険料などの社会保険料も上がるのでくれぐれも注意が必要だ。
食事の提供が課税されないためには、弁当代の全額を会社が負担せず、必ず代金の半額以上を従業員が負担する仕組みが必要だ。そして、会社の負担は1人あたり月額3500円(税込3850円)以下でなければならない。つまりいくら社員のためといっても「全額無料」では社員への給与所得とみなされてしまうわけだ。仮に1つ800円(税込)の仕出し弁当であれば、希望する従業員には半額の400円を徴収する前提で、かつ月9回(3850円÷400円=9.63回)までしか提供できない計算になる。
ただし、これは通常の勤務内での話であり、残業時間での食事提供となれば内容は異なる。残業食事代は、残業をした従業員に対する慰労を兼ねた実費弁償的なものであり、それゆえに常識的な金額の範囲であれば課税はされないことになっている。この場合、弁当など食事そのものを提供しても、また従業員がスーパーなどで立て替えて購入をして実費精算しても可能だ。

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