Vol.0603
<タックスニュース>
法人最低税率とデジタル課税 麻生氏「大筋で煮詰まってきた」
日米欧の先進7カ国(G7)は9月29日、オンラインで財務省会合を開き、新たな国際課税ルールについて議論した。世界共通の法人最低税率の導入や、GAFAに代表される多国籍企業へのデジタル課税について、最終合意に向けた詰めの調整を行ったとみられる。麻生太郎財務相は会合後に「いくつかの合意が得られた」と述べ、議論が進んでいることをアピールした。
新ルールの一つ目の柱は、法人最低税率の導入だ。これまで法人税率は各国の主権によってそれぞれが定めていたため、IT企業などの物理的拠点を誘致するため、全世界で減税競争が行われてきた。だが結果としてあらゆる国が税収減に悩む「底辺への競争」(米イエレン財務長官)に成り下がっていた点は否めない。今回の新ルールでは、世界共通の最低税率を15%と定め、これを下回る国に拠点がある企業は、親会社のある国に最低税率との差額を納めなければならなくなる。
もう一つの柱が、デジタル課税だ。これまで国際課税の大原則として、人や施設など物理的な拠点のある国のみが課税できるとされてきた。しかし近年急速に成長したIT企業などは、インターネットを通じて世界中にサービスを提供して利益を上げる一方で、物理拠点は法人税率の低い国にのみ設置して税負担を低く抑えてきた。巨大企業が利益に見合った税金をどこにも納めていないことが近年問題視されてきたが、今回の新ルールによって、物理的な拠点がなくても利益を得た消費地である市場国・地域が一定の課税権を持つようになる。具体的には売上高200億ユーロ(約2.6兆円)超かつ、利益率10%超の世界約100社が対象となり、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンといったデジタル企業のほか、日本のトヨタ自動車など一部の製造業も含まれる。
新ルールについては、すでに経済協力開発機構(OECD)の加盟国を中心とした134の国と地域で大枠合意を得ている。だが一方で、最低税率15%を下回る法人税率を設定しているアイルランドやハンガリーなどが承認を保留しているなど、課題も残している状況だ。
今回の会合では、主要国がどう結束して最終交渉に臨むか、具体的な税率や税収の配分方法について意見を交わしたものとみられる。会合のあと、麻生氏は「G7の間でいくつかの合意を得られた。交渉が何合目まで来たのかとは言えないが、大筋で煮詰まってきた。最終合意に向けた可能性がさらに高まった」と述べた。
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<タックスワンポイント>
失踪宣告を受けた相続人が生きていた! 遺産分割協議はやり直すのか?
相続人が行方不明で7年以上生死が不明なときは、失踪宣告を行うことで、その人を「もう死んだもの」として扱い、遺産分割協議を進めることができる。宣告をされた人は相続人から除外され、その人に法定相続人がいるなら、そちらが協議に参加することになるわけだ。
もしその後、失踪宣告を受けていた相続人が実際には生きていて、本人が失踪宣告の取り消しを行ったとしても、遺産分割協議をやり直す必要はない。「実は生きているのを知りながら協議を進めた」というような悪意がない限り、失踪中に行われた法律行為に影響が及ぶことはない。
ただし遺産分割で得た財産を返さなくていいかといえば、そうではない。民法では、「失踪の宣告によって財産を得た者は、その取消しによって権利を失う。ただし、現に利益を受けている限度においてのみ、その財産を返還する義務を負う」と定められているからだ。
この「現に利益を受けている限度」というのが曲者で、例えば相続した財産を全額ギャンブルで浪費してしまったような場合は、この現存利益が存在しないとして返す必要がない。しかし生活費として使ったような場合には、「失踪宣告によって得たお金を使った分、自分の財産を使っていない」として、利益が他に形を変えて今も残っていると解され、返還する義務が生じるのだ。この現存利益の解釈は非常に難しいため、専門家に相談することをお勧めする。
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