<タックスニュース>

消費税論議が早くも後退……反感ならぬ”反菅”ムード強まる――

 政権与党の党首が消費税率の引き上げを打ち出して国政選挙に臨むという異例の展開をたどった今回の参院選。結果的に民主党は非改選も含めた議席では10も減り、新聞には「民主党大敗」の大見出しが躍った。菅直人首相は「消費税を掲げると選挙に負ける」という政界のトラウマに挑んだが、かなわなかった。
 菅首相が克服しようとしたトラウマは、いまも政界に根深く残る。1989年4月に消費税を導入した竹下内閣は、リクルート事件も加わって批判が高まり、支持率が大幅に落ち込んで、総辞職に追い込まれた。1997年に税率を5%に引き上げた橋本内閣は、翌年の参院選で大敗し、総辞職した。
 ギリシャの財政危機で、日本でも財政再建への世論の関心が高まり、野党第一党の自民党も消費税増税を公約で表明するなど、増税を主張する与党にとって従来とは状況が大きく異なっていた。しかし、消費税に関する菅首相の発言が定まらず、国民の反発を買った。
 今後の焦点は、菅首相が打ち出した超党派による消費税を含む税制の抜本改革案が、今年度中にまとまるか否かに移る。参院選の大敗やその後の世論調査での厳しい結果を踏まえ、枝野幸男幹事長や玄葉光一郎公務員制度改革担当相が「今年度中にこだわらない」趣旨の発言をしており、消費税増税に向けてのムードは早くも後退し始めている。
 今年度中にまとめられなければ、政権基盤が弱体化しかねない。それ以前に9月の民主党代表選に向けて、党内政局がぼっ発する可能性も強まっている。

<タックスワンポイント>

社員に対する住宅資金貸付特例  44年の歴史に幕を降ろし廃止

 平成22年度税制改正により、租税特別措置法第29条で規定されていた「給与所得者等が住宅資金の貸付け等を受けた場合の課税の特例」が同22年12月末いっぱいで廃止されることが決まった。それを受け、このたび同特例にかかる法令解釈通達の改正が行われた。
 同特例は、?無利息または低い金利で会社から貸し付けを受けた場合の、通常より低い部分についての経済的利益?資金を金融機関などから借り受けた場合において、会社から利子の全部または一部に相当する金額の支払いを受けたとき、それに相当する部分?勤労者財産形成促進法に規定する事業主団体の講ずる勤労者の負担を軽減するために必要な措置を受けたとき、それに相当する部分――などについて非課税とされていたもの。
 昭和41年の創設から44年間存続してきた本特例だが、近年は利用可能者が減少。一部限られた人に対しての特例となっていたことから、「政策上有効とは言い難い」また「低利で住宅購入資金を借り入れているなどの優遇を受けているうえに、通常の貸し出し金利と比較したときの経済的利益について非課税となることに加えて、住宅ローン控除制度を併せて適用することが可能であり、住宅ローン控除制度のみを利用している者と比較すると平等性に欠けるため合理性は認め難い」として廃止が決定したもの。
 これにより、同23年1月からは「通常より低利で貸し付けを受けている部分」や「利子の支払いを受けている部分」などが給与として所得税の課税対象となる。課税所得金額が増えることで住民税などにも影響が出てくるので注意が必要だ。

税理士法人早川・平会計