<タックスニュース>

事務費967億円  クーポン給付に批判噴出

政府が経済対策に盛り込んだ18歳以下への10万円相当の給付を巡り、現金とクーポンに分けて配ることで事務経費が967億円増えることに批判の声が上がっている。現金給付分も加えると事務経費は1200億円規模に膨張。昨年春に国民1人当たり一律10万円を配った「特別定額給付金」でも1400億円超を事務費に費やしており、6日に開会した臨時国会でも議論になりそうだ。
政府の説明によると、現金給付分の事務経費が約280億円なのに対し、クーポン支給には967億円がかかるという。クーポンの印刷代や郵送費、コールセンターの設置費用などで予算が膨らんだとして、政府はクーポン分の事務経費を2021年度補正予算案に計上している。松野博一官房長官は11月29日の記者会見で「予算不足が生じないよう十分な額を予算として計上した。実際にはクーポンの電子発行など経費を軽減する方法も検討している」と述べた。
一方で、仮に10万円を一括で現金給付する場合はクーポンの支給費用はかからず、現金給付のための振り込み手数料など約280億円だけで済むという。この点につき野党側は「現金一括給付にすれば、その分で対象を広げられる」と指摘している。
18歳以下への10万円相当の支給を巡っては、政府は年内に中学生以下への5万円の現金給付を始めるため、21年度の新型コロナ対策予備費から7311億円を拠出。一方、年明け以降にクーポンで配る5万円相当の費用については、21年度補正予算案に1兆2162億円を計上した。
10万円相当を現金とクーポンに分けて支給する案は、給付金が子育てとは関係ない支出に充てられるのを避けたい財務省が岸田文雄首相に提案したものだ。ワイズスペンディング(賢い支出)の追求に向けた国会での議論を注視していきたい。

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<タックスワンポイント>

NISA非課税終了時の悩ましい選択  「ロールオーバー」で上限突破を狙う?

「貯蓄から投資へ」のスローガンのもと2014年に導入されたNISA(少額投資非課税制度)では、投資して得た利益の全てが非課税となる。利益が1千万円に達しようが1億円を超えようが一切税金がかからないというのは夢があるが、年間の投資上限額が120万円、非課税期間が5年間では、なかなかまとまった利益が生まれづらいのも事実だろう。
だがこれらの上限を突破できる方法が一つだけある。それが非課税期間終了時に使える「ロールオーバー」と呼ばれる制度だ。5年間の非課税期間が終わると、NISA用の口座の残高は課税口座に移され、その後も投資を続けるなら利益には当然所得税が課される。しかしこの時にロールオーバーを選べば、NISA口座に残った残高を使って、再びその年から5年間、非課税で投資を続けられるのだ。しかもその時に元手となる投資資金は、17年度税制改正で上限が撤廃され、青天井となっている。
今年末に非課税期間が終了を迎えるのは、17年にNISA口座で投資した株式だ。例えば17年に年間上限120万円で投資をスタートした人が、非課税期間の最終年である今年までに、その額を5倍の600万円まで増やしたとする。そこで600万円を課税口座に移してしまうと、5年間で得た利益480万円は非課税になるものの、今後投資して利益を得た時には、元手600万円との差額に譲渡所得税が課されてしまう。一方ロールオーバーを選べば、改めて22年度スタートのNISA口座に600万円が入り、そこから5年間で5倍の3000万円まで増えたとしても、全額が非課税となる。どこまで増やせるかは腕次第とはいえ、投資期間が単純に倍になるというのは魅力的な話だ。
注意点としては、ロールオーバーの枠に上限はないものの、その年の投資上限枠をつぶしてしまう点には気を付けたい。つまり120万円以上をロールオーバーすると、その年はもうNISA口座への入金ができなくなる。
ロールオーバーは元手が増えた時だけでなく、減ってしまった時にも有用だ。非課税期間が終了した時にNISA口座のお金を課税口座に移すと、株などの取得価額はその時点でリセットされてしまう。100万円で買った株が5年間で70万円まで値下がりしていれば、「70万円で買った株」とみなされ、その後100万円まで値戻りした時には30万円分の利益があったとして課税されてしまうのだ。この時にロールオーバーを選べば、取得価額100万円の株として6年目以降も運用できるので、元値に戻ったからといって不要な税負担を課されることはない。
もちろん値下がりしたケースでも、ロールオーバーした分はその年の投資枠を使ってしまうことに変わりはない。5年を区切りに損切りして新たな投資に乗り出すのか、粘り強く持ち続けるのか、運用者の手腕が問われそうだ。

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