<タックスニュース>

消費税不正還付の対応強化へ  「審査長期化に理解と協力を」

国税庁はこのほど、「消費税還付申告に関する当局の対応について」とする文書を公表し、消費税の申告から還付まで時間がかかるケースがあることに対して理解と協力を求めた。背景には、後を絶たない悪質な不正還付への対応を強化していく方針があるとみられる。当局は全国の国税局に消費税還付専門のポストを設けて、審査のスピード維持と不正防止を両立させたい狙いだ。
消費税は、仕入れ時に支払った消費税と、売上時に受け取った消費税を通算し、年間を通して売上時に受け取った額のほうが多ければ差額分を納税し、逆に仕入れ時に支払った額のほうが多ければ還付を受ける仕組みだ。その不正還付とはすなわち、仕入れ時に支払った消費税額を実際より多く申告することで、高額な還付金を受け取る行為を意味する。
たびたびの増税で消費税率が10%となり、不正還付による“旨味”は増しつつある。それに伴い不正還付も後を絶たない状況だ。今年1月には、東京都のイベント企画会社が展示用の血統書付きの猫を350匹購入したと偽って30億円を架空計上し、消費税2億円弱を不正に還付されていたことが分かった。
当局は不正還付を「国庫金の詐取」だとして厳しく調査をしているが、年間20万件にも及ぶ還付申告のすべてを精査するのは難しく、審査に時間をかけざるを得ない。こうした状況のもと国税庁がこのほど公表した文書では、「取引等の相手方と連絡が取れないことなどにより取引の実態の確認が困難である場合や、取引に係る金銭授受の事実確認が困難である場合、輸出等に係る証拠書類が適切に保管されていない場合などにおいては、それらの確認に時間を要し、還付を保留する期間が長期にわたる」と釈明。「還付税額が過大と認められる事由がないことが判明した場合には、遅滞なく還付を行うこととしています」として、納税者に理解と協力を求めた。
当局にとっても、還付が遅れると納税者に対して還付加算金を支払わなければならず、審査の効率化とスピードアップは喫緊の課題だ。そこで最新の22年度には、消費税の不正還付に当たる専担ポストとして、「消費税専門官(仮称)」を全国の各国税局、13税務署に置くことをすでに決定している。今後さらに消費税の還付申告に対する調査は厳しさを増しそうだ。

税、申告、事業承継のお悩みは無料相談実施中の税理士法人早川・平会計までどうぞ

<タックスワンポイント>

ハードル高い期限後申告の「正当な理由」  郵便収集後の投函は加算税免れず

今年も確定申告シーズンがやってきた。今年の確定申告期限は3月15日だが、「新型コロナの影響により延長希望」と申告書に書き添えることにより、4月15日までの延長が認められている。
申告書の提出が期限を過ぎてしまうと納税額が割増しになるが、期限後申告が“ど忘れ”や故意などによるものではなく「正当な理由」があるものと税務署に認められれば、期限後申告でも加算税は課税されない。だが、この「正当な理由」の有無については納税者と税務署で見解の相違が生じることも多い。
実際に国税不服審判所で争いになった事例では、法人税の申告書を法定期限内に郵便ポストに入れたものの、郵便の収集時間後だったために消印の日付が期限後となったものがある。裁決書によると、上司から申告書を提出するように指示を受けた社員が、仕事の忙しさの中で提出を失念していたという。会社は加算税の課税処分の除外要件に該当すると主張したが、審判所はこの訴えに正当な理由はないと判断し、加算税の課税処分は妥当とした。
税務署が正当な理由ありと判断する境界線は必ずしも明確ではなく、いったん指摘を受けたらその判断を覆すのは難しい。加算税を免れるために期限内に申告するのはもちろんのこと、期限内に提出できないことにやむを得ない理由があれば、後から正当性を主張するよりは、事前に税務署に「申告期限の延長申請」を提出して期限を先延ばしするようにしたい。
なお、期限後提出による税額の割り増し分は無申告加算税と延滞税で、無申告加算税の税率は本来納めるべき税金に対し、50万円までは15%、50万円超は20%、延滞税は納期限から2カ月は2.4%、それ以降は8.7%となっている(ともに2022年分)。また、2年連続で法人税の申告書を期限内に提出しないと、青色申告が取り消され、青色申告者への税優遇が受けられなくなる。

相続専門の税理士による、相続、生前対策、事業承継のご相談は、初回無料で実施中です

税理士法人早川・平会計