Vol.0377
<タックスニュース>
富裕層の海外資産3・2兆円 財調の罰則効果あるも氷山の一角
富裕層が海外に持つ資産が総額3兆円を超えることを、国税庁が10月31日に公表した。この数字は、一定以上の資産を持つ人に提出を義務付ける「国外財産調書」のデータによるもの。同調書は不提出や虚偽記載に罰則があることから提出件数は徐々に伸びてはいるものの、財産を持っているにもかかわらず調書を出していない人も相当いることから、3兆円は”氷山の一角”に過ぎないというのが大方の見方だ。
国外財産調書は、富裕層の持つ海外資産の把握と適正な課税を目的として、合計5千万円超の資産を海外に有している人に提出が義務付けられているものだ。国税庁がまとめた2015年分の提出状況によると、調書の提出件数は8893件で、総財産額は3兆1643億円だった。件数で前年より8・6%、価額で1・5%それぞれ増加している。同制度では15年1月から正当な理由のない未提出、虚偽記載に対する罰則規定がスタートし、提出件数も大幅に増加していた。今年は罰則規定の周知が進んだことなどにより提出件数がさらに増えたものと言える。
国税局の管轄ごとに見ると、東京が5792件で全体の65・1%を占めている。以下、大阪1223件、名古屋673件と続いた。また財産額では、東京が2兆3274億円で全体の73・6%を占め、富裕層の持つ資産の4分の3近くが東京に集中している現状が改めて浮き彫りとなっている。以下、大阪3927億円、名古屋1793億円となった。財産の構成比では有価証券が全体の48・4%と半数に近く、以下、預貯金、建物、貸付金の順で割合が高かった。
調書の提出件数が伸びている理由には、昨年から新たに設けられた罰則規定がある。正当な理由なく期限内に提出がなかったり虚偽の記載があったりしたときには1年以下の懲役か50万円以下の罰金が課され、未提出であったり記載のない財産について申告漏れがあったりしたときには加算税に5%のペナルティーが上乗せされることとなった。同時に、記載のあった財産に申告漏れがあったときには加算税を5%軽減するインセンティブも設けられている。
国税はそれでも未提出者が相当数いると見込んでおり、富裕層対策をまとめて10月25日に発表した「国際戦略トータルプラン」では、「提出義務があると見込まれながら、調書が未提出である者に対して、文書照会等を行っていく」と監視強化の姿勢を示したばかりだ。
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<タックスワンポイント>
教育資金を子や孫に一括贈与 業者への支払いで非課税になるのは?
子や孫に一括贈与した教育資金は、その資金の支払い先が学校であれば1500万円、それ以外であれば500万円を上限に非課税となる(合計で1500万円まで)。贈与資金は子・孫名義の口座で管理し、その口座は子や孫が30歳に達する日に終了する。
支払先が学校以外のときの費用とは、(1)学習塾、家庭教師、そろばん、キャンプ体験活動の費用、(2)スイミングや野球チームなどのスポーツ指導料、(3)ピアノ、絵画教室、バレエ教室などのスポーツ費用、(4)習字、茶道などの教育向上活動費用――を指す。月謝、謝礼、入会金、参加費といった指導の対価や、施設使用料、指導者を通じて購入する物品代が500万円まで非課税になる。塾や習い事の保護者会費や後援会費は非課税にならない。
また、学校教育に必要な費用を業者に直接支払ったときも、学生全員もしくは大部分の人が支払うべきものと学校が認めたものであれば、500万円まで非課税になる。例えば、教科書、リコーダー、裁縫セット、学校指定の制服、体操着、ジャージ、上履き、卒業アルバム代、行事写真代、修学旅行・林間学校などの校外活動費、給食費が対象だ。これらの費用については、業者からの領収書に加え、年度初めに配布されるプリントや校則が書かれた書類などの学校からの書面も金融機関に提出することで非課税になる。このほか、通学定期券代や留学渡航費、入学・転入・編入のための転居交通費も対象となる。
なお、一括贈与ではなく、教育資金が必要になるたびに支払う教育費用は上限なく非課税となっている。
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