<タックスニュース>

社員の着服は「所得隠し」  竹中工務店に重加算税5千万円

 会社に隠れて社員が着服した金額は税務上の「所得隠し」に当たるとして、国税局が故意による「仮装・隠ぺい」に該当する重加算税を科していたことが分かった。資産を社員に私的流用されたことに加え、その責任を会社が負わされたことになるとは、まさに”泣きっ面に蜂”としか言いようがない。
 大手ゼネコンの竹中工務店は、2015年12月期までの5年間で約1億5千万円の申告漏れを、大阪国税局の税務調査で指摘された。そのうち約1億円については、工事収益の計上時期を間違えるなどの経理ミスによるものだったが、残る約4600万円は元社員の「着服」によるものだという。
 元社員の男は、11年から15年にかけて、ビル工事を請け負った下請け企業に対して建設工事費などを水増し請求させ、本来の工事費との差額分を現金で受け取って着服していた。着服した現金は「私的に使った」といい、その後、男は懲戒解雇を受けた。
 この着服分について大阪国税局は「実態としては協力会社に支払われていないため、経費として認められない」として申告漏れに当たると認定。さらに、意図的に所得を圧縮したと「仮装・隠ぺい」に該当するとして、加算税のうちでも最も税率の高い重加算税を科した。追徴税額は計約4900万円に上る。
 竹中工務店は「ミスや不正を見抜けなかったことは大変遺憾だ」とコメントし、追徴税額を全額納付するとともに、元社員の男性を今後刑事告訴する方針だという。
 過去にも、07年にフジテレビで社員による着服が発覚して仮装・隠ぺいを伴う所得隠しと認定された例や、12年に東芝の子会社で元社員による9億円の着服が税務調査で発覚して重加算税含め2800万円を追徴された例がある。会社のあずかり知らぬところで社員が着服した金額に対して、会社が所得を「仮装・隠ぺい」したと判断するのは、いわば国税の「通常処理」と言えそうだ。
 対処法としては今回の竹中工務店のように着服した本人に訴訟を起こすのも一つの手だが、全額が取り戻せる保証はどこにもない。会社にとっては資産を私的流用された挙句に重加算税まで食らうという散々な結果だが、できることと言えば、着服や横領が起きないよう普段から相互チェック体制を整備しておくしかないというのは、なんとも心細い話だ。

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<タックスワンポイント>

保険料1/2が損金となる長期平準定期保険  解約返戻金のピークは20~30年後

 法人保険の中でも、長期平準定期保険は節税効果が高く、特に若い経営者にとって使い勝手がよいといわれることが多い。大きな特徴は、(1)長期間にわたって保険料の2分の1を損金に算入でき税負担が軽くなること、(2)解約返戻金の返戻率のピーク期間が長く続くこと――の2点だ。
 保険期間が「99歳」「100歳」などと長期にわたり、その期間内に死亡事故などがなければ保険期間は終了し、満期保険金は支払われない掛け捨て保険である。保険期間が長期にわたるため、被保険者の加入年齢が若いほど、また保険期間が長期であるほど、解約した場合の解約返戻金が多くなる。40歳くらいまでの若い経営者であれば、20~30年後の解約を見越し、その解約返戻金を自身の退職金や事業承継の準備金に充てたりすることも可能だ。また、営業赤字が出そうな年度に解約して解約返戻金を受け取って益金と相殺すると、税負担は少なくて済む。
 ただし、あくまで掛け捨て定期保険の一種なので、解約返戻金のピーク(20~30年後)を過ぎると一気に返戻率が下がるので注意する必要がある。

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